| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) C02-14  (Oral presentation)

外来生物の分布を調べる市民科学的手法とその効果 — オオクビキレガイを例に
Citizen science methods and their effects to investigate the distribution of alien species — a case study in Rumina decollata

*石田惣(大阪市立自然史博物館)
*So ISHIDA(Osaka Museum Nat. Hist.)

大阪市立自然史博物館では2015〜19年に市民参加で外来生物の分布を調べるプロジェクトを行った。その一つとして大阪府下でのオオクビキレガイ(Rumina decollata)の分布調査を行った。本種は地中海沿岸原産のオカチョウジガイ科の陸貝で、葉物野菜の新芽を食べる農業被害があるほか、他の陸貝を捕食するため在来生態系への影響も懸念される。調査の第一段階として、府下の鉄道駅から約1km圏内を目安に1時間の探索を行うこととし、駅を踏査単位として調査への参加を呼びかけた。のべ154駅の周辺を調査した結果、うち20駅で見つかり、主に泉北地域(堺市、泉大津市、高石市、和泉市)で広範に分布することがわかった。
第二段階として、泉北地域の詳細な分布状況を調べることにした。2019年7月に高石市、泉大津市、和泉市の全小学校児童(約1万8千人)に情報提供を呼びかけるチラシを配布した。チラシには同定方法と生態情報を載せ、見つけたら写真を撮って場所とともにメールで送るように呼びかけた。また、寄せられた分布情報を地図で表示するサイトも立ち上げた。チラシは大阪市立自然史博物館及び近隣の博物館等でも配布した(計約5千枚)。これらの調査活動は、発表者のTwitterでも情報発信を行ったほか、8月に大手新聞社の取材を受け記事として配信された(ウェブ版のみ)。
その結果、2019年11月末までに54件の情報提供があった。うち46件がオオクビキレガイで、8件は別種または不明種だった。調査を知ったきっかけとして学校でのチラシは21件、博物館等でのチラシは10件、自分で検索してサイトを見たのは5件、SNSを見たのは4件、新聞記事は3件、その他・不明は11件だった。学校チラシは配布4ヶ月後でも情報提供が複数あった。学校チラシは印刷費や教育委員会の協力が必要となるが、外来生物の市民科学的調査として有効な一手法であると考えられる。発表では調査で明らかになった分布状況も紹介する。


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