| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) E01-02  (Oral presentation)

外来生物の分布拡大予測での統計・機械学習アプローチと生物的メカニズムの融合 【B】
Combined approach of machine learning and mechanism modeling in predicting range expansion of alien species 【B】

*小池文人(横浜国立大学)
*Fumito KOIKE(Yokohama National University)

外来生物や新興感染症はヒトを含む生態系に大きな被害をもたらす深刻な脅威である.グローバル化により近年では2017年からのヒアリ,2018年からのイノシシと豚のCSF,2019年のツマジロクサヨトウ,2020年の新型コロナウイルス,侵入警戒中のアフリカSFなど緊急の対応が必要な事態が続いている.有効な対策のためには,あらかじめ侵入場所と侵入時期を予測して備えることが重要であり,また経営における投資の意思決定にも必要であるため,外来生物の分布拡大予測が求められている.増殖しながら空間的に拡大する詳細なモデルや,自然の分散と物資移動が同時に関与する場合などでは,まず経路を特定し,生物の自然の分散プロセスや物資輸送量など経路に関する詳細な情報を調査し,これを利用した数理モデルを用いて予測している.このような詳細なメカニズムを利用したアプローチが必要な場面も存在するが,新たな外来生物では経路が不明であることや,特定の貨物の輸送量などの十分な情報が迅速に得られないことにより予測が困難なケースも少なくなかった.これらの欠点を克服するため,侵入経路情報などの生物的メカニズムを一切利用せず過去の分布拡大事例との比較のみから予測する統計学・機械学習的アプローチを提案した.ただし統計学・機械学習的アプローチは分布拡大初期で情報が不足する場合に有益だが,詳細な空間スケールなどでは生物的メカニズムによる予測が有利である.両者のアプローチにはそれぞれ利点と欠点があるため,両者の欠点を打ち消して長所を利用する両者の融合アプローチが期待される.ここでは両メカニズムを融合した予測で最も簡単なものとして,メカニズムによる予測結果を統計学・機械学習的アプローチでのトレーニングデータの一つとして利用する試みを報告し,野生イノシシ個体群のCSFやツマジロクサヨトウの分布拡大予測への応用を試みる.


日本生態学会