| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) E02-06  (Oral presentation)

コナラ二次林における植物・昆虫・鳥類の機能群種数への植生管理の影響
Effects of vegetation management on species richness in functional group of plants, insects and birds in Quercus serrata secondary forests

*矢口瞳(東京農工大学大学院), 星野義延(東京農工大・院・農)
*Hitomi YAGUCHI(TUAT Grad. Sch. of Agri.), Yoshinobu HOSHINO(TUAT  Inst. of Agri.)

武蔵野台地のコナラ二次林において、植物と昆虫、鳥類の機能群種数の相互の影響と機能群種数への植生管理の影響を調べた。植物は161種、昆虫は282種、鳥類は26種が確認された。出現した植物、昆虫、鳥類の機能特性を文献で調べた。植物はラウンケアの休眠型、葉の生存季節、開花・結実季節、種子散布様式など9項目、昆虫は成虫の体長、幼虫と成虫の食性、成虫の出現季節など5項目、鳥類は体長、食性、出現季節の3項目の機能特性データを用いてクラスター解析を行い、8つの植物機能群(PFGs)、6つの昆虫機能群(IFGs)、3つの鳥類機能群(BFGs)に分類した。各機能群種数を目的変数、管理要因、環境要因、餌資源要因を説明変数として最尤推定法にもとづく構造方程式モデリング(SEM)を行った。管理要因は下刈り・落葉掻き、伐採、常緑樹除伐の3項目、環境要因は樹冠開空度、土壌硬度、堆積落葉枚数、植被率など9項目、餌資源要因は虫媒花開花種数、被食散布結実種数、クモ網数の3項目とした。SEMの結果、コナラ二次林の典型草本種群の種数から大型植食昆虫の種数に正の影響がみられた。また伐採からコナラ二次林の典型木本種群の種数に、落葉掻きから中型植食昆虫、中型嘴鳥類の種数への正の影響がみられた。さらに虫媒花開花種数からコナラ二次林典型草本種群と大型植食昆虫、肉食昆虫の種数への正の影響がみられた。虫媒花開花種数は伐採林分>下刈り・落葉掻き林分、常緑樹除伐林分>放棄林分の順で多かった。以上より、伐採と落葉掻きがコナラ二次林の典型植物や昆虫・鳥類の一部の機能群の種数増加に、直接的・間接的に寄与していることが示唆された。しかし、本研究では植物から植食昆虫、肉食昆虫、鳥類の種数への連続した影響(ボトムアップ効果)は確認できず、植生管理による生物多様性保全効果の解明には、より多くのサンプルを用いた解析が必要と考察された。


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