| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) G01-03  (Oral presentation)

鳥散布ネットワークにおける特殊化の成立と嘴形態変異との関係 【B】
Relationships among the inter- and intraspecific variations of beak morphologies and specific interactions in  bird dispersal network 【B】

*大河原恭祐(金沢大学), 木村一也(石川県森林組合, 金沢大学), 亀井夢乃(金沢大学), 佐藤文男(山階鳥類研究所)
*Kyosuke OKAWARA(Kanazawa Univ.), Kazuya KIMURA(Foresty assoc. Ishikawa Pref., Kanazawa Univ.), Yumeno KAMEI(Kanazawa Univ.), Fumio SATOH(Yamashina Ins.)

果実食性の鳥種群集と液果植物群集との間には被食型種子散布を通じた共生系ネットワークが構築される。多くの共生系ネットワークはジェネラリスト種とスペシャリスト種から構成される非対称型の入れ子型構造 Nestedness に安定しやすく、種子散布ネットワークもこの構造を示すことが多い。その発達には複数の特定種間の相互関係の形成が伴い、それら種群は入れ子型構造のコア部を構築する。一般には密度が高く、相互関係が生じやすい種群がコアグループとなるが、種間の特異的関係は各種の特徴、利用性や選好性、資源分布条件にも依存して成立するため、密度のみが要因になるとは限らない。演者らは2005年から福井県越前市の織田山で渡り鳥による鳥散布ネットワークの調査を行ってきた。本調査地の鳥散布ネットワークは入れ子型構造を示し、そのコアの一部はメジロとタラノキ、カラスザンショウの2種との特異的関係によって構築されていた。本研究ではこれら種間になぜ特異的関係が成立したのか、その要因をメジロの選好性と植物種2種の利用性に着目して調べた。タラノキとカラスザンショウは植物体と果実の形態的特徴に他の植物種とは異なる点があり、2種ともメジロが枝上の定点から捕食可能な果実数(潜在捕食果実数)が多く、また果実サイズが小さかった。さらにタラノキの果実は繊維質の果肉部の割合が多かったのに対し、カラスザンショウの果実は脂質の割合が多く脂肪酸構成は他種とは異なる構成を示した。メジロの各植物種での採餌行動を観察、比較したところ、この2種では高い採餌効率を示し、特にタラノキは単位時間あたりの摂取果肉量がもっとも高かった。これらの結果から2種の植物種における高い採餌効率と獲得できる量的、質的利益の高さがメジロに選好される要因と考えられ、その高頻度の利用が鳥散布ネットワークのコア部構築につながったことが示唆された。


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