| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-08  (Oral presentation)

気候変動下で全球の森林分布可能域はどのように変動するか
Response of global forest distribution to climate change

*平田晶子(国立環境研究所), 小南裕志(森林総合研究所), 大橋春香(森林総合研究所), 松井哲哉(森林総合研究所), 肱岡靖明(国立環境研究所)
*Akiko HIRATA(NIES), Yuji KOMINAMI(FFPRI), Haruka OHASHI(FFPRI), Tetsuya MATSUI(FFPRI), Yasuaki HIJIOKA(NIES)

 気候変動にともなう気温の上昇や降水パターンの変化が樹木の枯死を引き起こし、森林の分布域を変化させることが懸念されている。森林の分布域の変化は、炭素固定などの森林生態系の機能の変化を通じて、人間社会にも大きな影響を与えるため、気候変動に対する森林のレジリエンスの評価が求められている。しかし、気候に対する樹木の応答は複雑で、植物種や機能群によってもその応答は異なる。そのため、広域スケールでの森林分布に対する気候変動影響評価においては、樹木の枯死が生じる気候的な閾値を明示的に評価に組み込むことができていない。
 本研究では、樹木の枯死を引き起こす気候的なストレス要因として乾燥、強光、低温に着目し、これらの気候条件と全球スケールの森林分布情報との関係を機械学習によって評価することで、森林の気候に対する応答や森林の成立が制限される気候条件の閾値を全球スケールで帰納的に推定した。乾燥の指標として乾燥指数(可能蒸発散量と降水量の比)を、強光の指標として日射量を全球30秒解像度で推定し、気温と合わせて機械学習の特徴量として使用した。また、構築したモデルに将来の気候条件を当てはめることで、気候変動による森林分布域の変化を予測した。
 解析の結果、上記の気候条件を用いて現在の森林分布の予測が高精度で行えること、低温下での高い日射量や、乾燥などの条件が森林の成立に対して強い影響力を持つことが示された。また、気候変動に伴って、森林の分布可能域が拡大する地域と縮小する地域を推定した。発表では、これらの地域の地理的な特徴についても紹介する。


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