| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) I01-02  (Oral presentation)

異時的種分化における時間隔離の解消とその帰結
The consequence of disappearing temporal reproductive isolation between allochronic populations

*山本哲史(京都大学), 工藤誠也(弘前大学), 佐藤臨(首都大学東京), 池田紘士(弘前大学), 藤澤知親(滋賀大学), 曽田貞滋(京都大学)
*Satoshi YAMAMOTO(Kyoto Univ.), Seiya KUDO(Hirosaki Univ.), Nozomu SATOH(Tokyo Metropolitan Univ.), Hiroshi IKEDA(Hirosaki Univ.), Tomochika FUZISAWA(Shiga Univ.), Teiji SOTA(Kyoto Univ.)

生物種が多様化するメカニズムを解明することは進化生態学の主要な課題である。種分化に関する研究の多くは集団間の地理的隔離、もしくは同所的であっても利用する微環境の違いによる空間的な隔離が生じる仕組みに着目している。一方で、我々は時間的隔離が種分化を生じさせる仕組みに着目して研究している。材料であるクロテンフユシャク(Inurois puctigera; 鱗翅目シャクガ科)は寒冷地では同所的に羽化時期の二型が見られる。二型のうち、一つは晩秋から初冬頃に成虫が羽化、繁殖し、卵で越冬する。他方は蛹で越冬したのち、晩冬から初春頃に羽化して繁殖する。このような生活史二型が見られるほとんどの地点において同所的な初冬型集団と晩冬型集団の間に遺伝的分化が見られることが明らかとなっている。さらに、本州北部の初冬型と晩冬型は2つの系統へと分化していることがミトコンドリアDNAの解析によって示唆されているが、九州の高標高地域の初冬型と晩冬型はほとんどのミトコンドリアハプロタイプを共有しており、ごく最近になって初冬型と晩冬型が分化したことが示唆されている。私達は、このごく最近に分化を始めたと考えられる九州の高標高地域の集団をもちいてゲノムワイドな遺伝解析から分化の年代や分断選択を受けているゲノム領域について明らかにした。発表では、ゲノムワイドな解析に先立って行ったリファレンスゲノム構築、さらに、並行して研究している生活史制御機構についても触れる。現段階では種分化に貢献した遺伝子の特定には至っていないが、これまでの結果を踏まえて今後の展開について議論したい。(本公演はタイトルを変更していますので、お気をつけください)


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