| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) L01-07  (Oral presentation)

南極大陸でのコケ植物における周辺土壌生物の活性が分解に与える影響
Effects of soil organism activity on degradation in bryophytes in Antarctica

*永田祐大(同志社大学), 大園享司(同志社大学), 長谷川元洋(同志社大学), 松岡俊将(兵庫県立大学)
*Yudai NAGATA(Doushisha University), Takashi OSONO(Doushisha University), Motohiro HASEGAWA(Doushisha University), Shunsnke MATUOKA(Hyogo Prefectural University)

南極大陸の98%は氷床・氷河であり、残りの2%が露岩域とよばれる無氷域である。露岩域では、コケや地衣類、淡水藻類、菌類などが極限環境に適応し生息している。その中で菌類は有機物を分解し養分を循環させ、貧栄養下の南極の陸上生態系において重要な役割をしている。南極の菌類の性質を知ることは南極の陸上生態系を理解するには欠かせないと考える。菌類はコケに多く存在し、コケは南極陸上生態系の主要な構成要素である。コケは断面に分解段階に伴う層構造がみられる。この特徴から、本研究では南極コケ分解に伴うコケの化学組成の変化と周辺微生物の基質利用性の変化について検討した。
サンプルは2010年1月に南極大陸の露岩域で採取されたコケを使用し分解段階に従い4層 (地上部から地下部へG,R,B,BS層とする)に分けられた。フーリエ変換赤外分光光度計を使用し化学組成を波形として表し、補正を行い相対高さとして定量的に示した。基質利用性の測定にはEcoplateを使用し、活性を表すAverage well colour development(AWCD)と基質利用多様度を表すShannon diversity index(H’)を算出した。相対高さとAWCD、H’をそれぞれ応答変数、コケ層を説明変数とし一般化線形モデルにて解析を行った。基質利用性の解析より、H’において層間で有意差がみられG,R層に比べBS層の方が大きな値をとるという結果が得られ、分解が進むにつれ定着する微生物の基質利用の多様性が大きくなることが明らかとなった。化学組成の解析より1227,1266,1329,1367,1422 cm-1の波長では有意差がみられG層からB層へ減少していることがわかり、925,1033,1126 cm-1の波長では有意差がみられR,B層からBS層へ減少していることがわかった。先行研究でこの波長はリグノセルロースに関連することが示されており、分解に伴いリグノセルロース量が減少し、さらにリグノセルロースの中で初期に分解される組織と後期に分解される組織に分かれることが明らかになった。


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