| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) L01-13  (Oral presentation)

雑草の大発生をどう抑える?ムギ畑長期データを用いた予測モデルと管理効果の評価 【B】
How do we control weeds? Estimation of predictive models using long-term monitoring data at wheat fields and evaluation of management effects 【B】

*松橋彩衣子(農研機構), 深澤圭太(国立環境研究所), 浅井元朗(農研機構)
*Saeko MATSUHASHI(NARO), Keita FUKASAWA(NIES), Motoaki ASAI(NARO)

今日の農業の雑草制御において、除草剤だけに頼らずに、作物や雑草の生態的特性を考慮してうまく農地管理をしていく、総合的雑草管理 (IWM、Integrated Weed Management)という考え方が広く受け入れられている。数々の管理オプションから適切なものを選んで管理方法を最適化するためには、各管理オプションがどれだけ雑草の発生を抑える効果があるのか、何年続けるとどれだけの効果が得られるのかを推定することが重要となる。ムギ畑における強害雑草カラスムギは、世界的に甚大な被害をもたらしているが、国内の麦作においては有効な生育期除草剤はなく、国外においては除草剤抵抗性獲得が広く報告されている。そのため、IWMの有効性が指摘されている。そこで本研究では、各管理オプションが本種の発生の抑制に与える効果について、茨城県41地点における約10年に及ぶ観察データを用いて解析した。転作、休耕、夏期の灌漑、播種時期の調整といった管理オプションの効果を考慮したカラスムギ発生度の推移行列モデルを順序ロジット回帰により推定した。その結果、本種の生活史を完全に断ち切る農地管理は、たとえ前年の発生度が高くとも急速に抑制し、発生度をゼロに収束させることが示された。また、どの管理体系も、継続させると長くとも10年以内に効果が収束することが示された。これらの結果は、IWMオプションを選択する上での意思決定や、効率的な農業生産活動の促進への貢献が期待できる。


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