| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) L02-02  (Oral presentation)

ポリネーションシフトに基づくツバキ節の種分化
Speciation of the sect. Camellia based on Pollinator shift

*阿部晴恵(新潟大学), 三浦弘毅(浅虫水族館), 片山瑠衣(西部造園), 王仲朗(昆明植物園)
*Harue ABE(Niigata Univ.), Hiroki MIURA(Asamushi aquarium), Rui KATAYAMA(SEIBU landscape), Zhonglang WANG(Kunming Botanical Garden)

日本全国の海岸沿いに分布するヤブツバキ(Camellia japonica)と日本海側多雪地に分布するユキツバキ(C. rusticana)の2種は、最終氷期に分化したといわれ(津山 1988)、花糸の合着率や花糸の色などで形態的に分けることができ(Hagiya and Ishikawa 1961 他)、葉緑体DNAでも識別が可能である(Tateishi 2007)。しかし、両種の進化的背景については解明されていない。ヤブツバキは鳥媒であるが、ユキツバキは虫媒であるという生態的な特徴があるため、祖先的なツバキ属が虫媒であることを加味すると、ヤブツバキを含むツバキ節は、虫媒から鳥媒にポリネーターシフトすることにより進化したのではないかと予測される。このため2種の形態等の比較や2種を含むツバキ属の分子系統学的解析を行うことにより、両種の進化的背景を考察することを目的とした。
  その結果、花の形態はPCAにより明確に区別され、花弁と花糸色も統計学的に異なることが明らかになった。またポリネーターにとって重要な形質である花蜜と糖度は、ヤブツバキでは花蜜は多く糖度は低く、ユキツバキではその逆であり、それぞれ虫媒と鳥媒の送粉シンドロームに位置づけられた。cpSSRおよびゲノムワイドSNPに基づく遺伝的構造からは、2種は異なるクラスターに分けられ、さらにユキツバキは中国のC.chekiangoleosaと系統的に近縁で、ヤブツバキより祖先的な系統であることが示された。


日本生態学会