| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 MEW01-3  (Workshop)

土地利用データに基づく斑点米被害予測モデルとハザードマップによる広域管理への応用
Area-wide pest management by using a rice damage predictive model based on land use data and the model-driven hazard map

*田渕研(東北農研)
*Ken TABUCHI(TARC)

 農業生態系はモザイク状に栽培された作物圃場から成り立っている。それぞれの圃場は同じ作物を栽培していても各生産者による農地管理(品種、使用農薬(除草剤・殺虫剤・殺菌剤)、施肥など)によって圃場の内部の環境は異なり、それぞれがモザイクとなったビッグデータとなって存在している。これらの景観構造が生物多様性、生態系サービス、作物収量・被害などにどのように影響するのかを検討し、応用することは応用生態学において重要なテーマの一つといえよう。日本国内の農地区画情報(筆ポリゴン)は農水省から無償で提供されており、作付け情報を利用したデータ駆動型研究の発展が期待される。今回は農地の作付データを利用・応用した害虫管理研究について話題提供を行う。
 農業生態系において害虫個体群は農地-非農地を季節的に行き来している。局所的な農地管理のみならず、農地周辺環境によって害虫の発生量や被害が大きく左右されることについては、これまでに多くの研究が蓄積されてきた。しかし、この「農地周辺環境-害虫個体群」の関係を一歩進めて、害虫の被害予測を行い、管理へ応用する取り組みはほとんど見られない。我々は斑点米カメムシの主要種アカスジカスミカメにおいて、本種の発生量に影響する既知の空間スケール内の土地利用を用いて被害を予測する統計モデルを構築し、その結果をハザードマップとして示した(Tabuchi et al. 2017. Agr. Ecosyst., Env.)。これにより、生産者や営農指導に携わる人たちはどの地域でイネの害虫被害が起こりやすいのか視覚的に捉えることが可能になり、殺虫剤散布の労力配分や散布回数の決定支援への応用が期待される。本講演では、土地利用情報を用いた作物被害予測やハザードマップ利用、ハザードマップの外挿可能性の検証など近年の調査結果について、今後の展開も含めて紹介する。


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