| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-011  (Poster presentation)

カラマツ人工林における小規模皆伐がヤマネの生息に与える影響
Effect of small-scale clear cutting on the inhabitation of Japanese dormouse in cutting larch plantation forest; Investigation by Nest box survey

*遠藤啓生, 上條隆志, 杉山昌典(筑波大学)
*Hiroki ENDO, Takashi KAMIJO, MASANORI SUGIYAMA(University of Tsukuba)

人工林伐採は哺乳類を含む野生動物に大きな影響を与える。特に、樹上性哺乳類については、伐採による影響が大きいと考えられるが、発見や捕獲が難しく研究者の数も少ないことから知見が不足している。本研究の対象種ニホンヤマネGlirulus japonicus(以下ヤマネ)は体長6~8㎝、体重12~25g程度の樹上性齧歯目である。ヤマネは森林にすみかや餌資源のほとんどを依存しており、伐採の影響を受けやすい。そこで、本研究では、カラマツ人工林における約1haの皆伐がヤマネの生息に与える影響を調べた。
2018年4月、皆伐地の林縁から0~400mの範囲に計30地点の調査地点を設置した。2019年4月、皆伐地の林縁に面した4地点及び、林内2地点を追加で設置した(計36地点)。各調査地点に5個ずつ巣箱を架設し生息確認調査を行った。また、各調査地点に植生調査プロットを設置し,開花・結実調査及び毎木調査(1回)を行った。調査は2018~2019年5月下旬から9月下旬まで毎月行った(計20回)。
応答変数を調査地点ごとのヤマネの在不在データとする一般化線形混合モデルによって解析を行った。調査年ごとにヤマネの生息確率に対する皆伐地が創出する林縁の効果を調べたGLMM の結果によると、2018年2019年ともに林縁の効果が有意であった。皆伐地に隣接することはヤマネの生息確率に負の影響があることを示唆している。2018年は、2019年よりも強い負の傾きを示した。調査地点を林縁、林内に分けて行ったGLMMの結果によると、林内では下層植生が豊かになるにつれ一定の傾きで生息確率が向上したのに対し、林縁では、ある閾値を過ぎると急激に生息確率が上昇する予測となった。
本研究から、皆伐1・2年目の林縁効果は、ヤマネの生息に負の影響を与えていることが分かった。また、ヤマネの生息を大きく左右するのは下層植生であり、下層植生が豊富な林縁部のみ、生息地としての利用価値があることが示唆された。


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