| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-029  (Poster presentation)

水域環境がカメ類の分布様態に及ぼす影響の評価ー岐阜県伊自良川における事例ー
Impacts of aquatic environments on the distribution pattern of freshwater turtles, a case study of the Ijira River, Gifu Prefecture

*野間明加里, 大西健夫, 楠田哲士, 橋爪涼子, 川村きこ(岐阜大学)
*Aakari NOMA, Takeo ONISHI, Satoshi KUSUDA, Ryoko HASHIZUME, Kiko KAWAMURA(Gifu Univ)

 日本に生息する淡水生カメ類のうち、ニホンイシガメMauremys japonica (以下イシガメ) は河川上流部や山麓部のため池に,クサガメM. reevesii,スッポンPelodiscus sinensisとミシシッピアカミミガメTrachemys scripta elegans (以下アカミミガメ)は河川下流部や低平地のため池に生息するとされているが,分布の違いをもたらす要因は明らかにされていない.そこで,水域環境が3種の分布に影響していると仮定しカメ類の生息環境の定量評価と分布規定要因の解明を目的として研究を行った.
 調査地は長良川水系伊自良川本流およびその支流である新堀川とし,カメ類の生息調査と河川環境計測を行った. 生息調査は目視調査を週2回,カニかごによる捕獲調査を月2回の頻度で,2019年3月から10月にかけて行った.捕獲調査は11地点で行った.環境計測は,ロガーによる経時的な水深と水温の計測,捕獲調査時の定期採水によるEC,DO,pH,水温,陽陰イオン計測を行った.またキャリブレーションとバリデーションを施した水文モデル(SWAT:Soil & Water Assessment Tool)による計算値から平均的な流速と水深を推定した.
 目視・捕獲の両調査において,先行研究同様イシガメは河川上中流部,クサガメとアカミミガメは河川下流部を中心に確認された.ただし,クサガメの分布は新堀川及び伊自良川の大学近傍部分に著しく偏っていた.カメ類の分布と河川環境を比較した結果,クサガメは平均水温20℃以上,流速0.10m/s以下の水域で,イシガメは水深60 cm以下,流速0.15m/s以上の水域で,アカミミガメは水深1m以上,または流速0.15m/s以下の水域で主に確認された.特に,クサガメでは水温と流速,イシガメでは水深,アカミミガメでは水深と流速が分布の規定要因となっている可能性が示唆された.


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