| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-072  (Poster presentation)

行動特性の相性の良さはつがいの繁殖成績を向上させるか?
Can high reproductive success be achieved by partner compatibility in behavioral traits?

*小野遥(北海道大学)
*Haruka ONO(Hokkaido Univ.)

 なわばり防衛行動は負傷リスクを伴い、繁殖行動などとトレードオフの関係が見られることから、個体の適応度に影響する。また両親で子育てを行う種では、つがいの行動が繁殖成績に影響することが示唆されている。近年では行動傾向の類似性など、つがいの行動の「相性」についても検討されている。しかし、つがいのなわばり防衛行動の相性と繁殖成績の関係性の検証例はほぼない。本研究では、亜種ダイトウコノハズクOtus elegans interpositusを用いて、同種他個体に対するつがいのなわばり防衛行動と繁殖成績の関係を検討した。2019年に巣箱で繁殖した27つがいに対し、抱卵期間中に未知のオスの声を再生するプレイバック実験を実施した。実験中には巣箱内のメスの行動を録画・録音した。雌雄が音声に対してなわばり広告声を発するまでの時間・発する頻度をつがいの行動の指標として計測した。巣立ち雛数、雛の形態計測値、初卵日を繁殖成績の評価基準とした。一般化線形モデルを用い、応答変数には繁殖成績を指定した。説明変数にはつがいの行動に関する変数、及びつがいの行動の「相性」の指標としてそれらの変数の交互作用を指定した。繁殖成績を説明するつがいの行動指標及びそれらの交互作用を選択した。
 その結果、巣立ち雛数や雛の形態計測値はつがいの行動指標との関係性が見られなかった。個体の防衛行動の強度は給餌等の養育行動を左右せず、これらの行動間にはトレードオフの関係がないと考えられる。また、初卵日についてはオスの行動にかかわらず、早く鳴き返すメスほど産卵が遅いという結果が得られた。メスが防衛行動にエネルギーを費やすことで産卵が遅れ、それに伴う雛の定着率の低下など、適応度に負の影響を与える可能性が推察される。
 本個体群では、なわばり防衛に関するつがいの行動の相性は繁殖成績に寄与しないことが示唆された。また、本亜種の防衛行動は産卵におけるコストになり、メスの適応度に影響すると推察された。


日本生態学会