| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-073  (Poster presentation)

干潟に生息するテッポウエビとハゼの条件的共生の種間関係
The interspecific relationship of a facultative shrimp-goby association in tidal flats

*桐原聡太(高知大院黒潮), 邉見由美(京都大フィールド研), 伊谷行(高知大院黒潮)
*Sota KIRIHARA(Kuroshio Science, Kochi Univ.), Yumi HENMI(FSERC, Kyoto Univ.), Gyo ITANI(Kuroshio Science, Kochi Univ.)

 海洋環境における相利共生の例として、テッポウエビ類が掘った巣穴にハゼ類が住み込み警護を行う関係について多くの知見が得られている。そのほとんどはお互いに共生が生存や繁殖に不可欠な絶対共生の関係についての研究例であり、共生が不可欠ではない条件的共生については研究例が少ない。これまで、大西洋において絶対共生と条件的共生の行動様式を比較する研究がなされた。絶対共生のハゼは巣穴口付近に留まり続けるのに対し、条件的共生のハゼは巣穴口から離れた場所にまで出て行くこと、また、宿主のテッポウエビは、条件的共生のハゼと共生した際には、絶対共生のハゼの場合と比べて外出の頻度が低いことが知られている。このような絶対共生と条件的共生における行動の違いをより一般的なものとするためにも、インド−西太平洋域において、条件的共生の行動様式を明らかにする必要がある。そこで、本研究では、日本の潮間帯に生息し条件的共生関係にあるツマグロスジハゼ Acentrogobius sp. とテッポウエビ Alpheus brevicristatus の巣穴外行動を観察することによって、利害関係を推定した。
 その結果、ツマグロスジハゼは、テッポウエビの巣穴を隠れ家として利用し、巣穴口に留まることもあれば、巣穴から離れた場所に移動する行動も示した。本種はテッポウエビの巣穴を条件的に利用することにより、共生関係から利益を得ていると考えられた。一方で、テッポウエビは、ハゼと共生している場合、ハゼが巣穴口付近にいるときに最も多く外出しており、ハゼと共生することにより、摂餌や砂泥の排出に必要な巣穴外行動を行いやすくなる利益を得ていることが示唆された。さらに、ハゼと共生していない個体でも巣穴外行動を行うことが観察された。このことは、絶対共生のハゼと共生する種には見られない可塑的な行動パターンであり、条件的共生のハゼとしか共生しない本種特有の特徴であると言える。


日本生態学会