| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-089  (Poster presentation)

唾液腺分泌物がヤマトシロアリの行動に与える効果:誘引性・摂食量・糞を置く行動
Effects of salivary gland secretions on the behavior of Reticulitermes speratus

*石神広太, 北出理(茨城大学)
*Kota ISHIGAMI, Osamu KITADE(Ibaraki Univ.)

 シロアリなどの社会性昆虫では、多数の個体が協力し秩序だった集団行動を行う。集団行動には個体の形態的特徴と対応した分業がみられる場合がある。集団行動の際には、フェロモン物質のような各個体が環境中に残すシグナルが重要な役割を果たす。シグナルに各個体が反応することで、全体として秩序だった行動が可能になると考えられている。
 従来、シロアリの唾液腺分泌物には摂食行動と建設行動の促進作用があると考えられてきた。しかし、建設行動促進作用は一種のシロアリでしか確認されておらず、また、唾液腺分泌物が本当に個体を誘引する作用を持つかは確認されていない。唾液腺の発達度合いには個体間変異があることが知られているが、この変異と行動との関係もわかっていない。
 本研究では、唾液腺分泌物をしみこませたろ紙が入ったシャーレにヤマトシロアリを入れて行動を観察し、ろ紙上の個体数の変化、ろ紙の噛み跡の数、ろ紙上の糞の個数を計測することで、個体の誘引作用と摂食・糞蓄積促進作用を調べた。また、唾液腺の発達度合いの指標として唾液腺腺房数、体サイズの指標として頭幅を測定し、頭幅と唾液腺腺房数が建設行動の頻度に与える影響を調べた。
 唾液腺分泌物は誘引作用や糞蓄積促進作用を示さなかったが、唾液腺分泌物を付着させるとろ紙の摂食が促進された。唾液腺と頭幅の測定の結果、頭幅よりも唾液腺腺房数に大きな個体間変異が確認された。建設行動の観察では、餌場の材をかじり取る行動と、そこで生じた破片を床や壁に押し付ける行動がみられ、これらの行動頻度が個体の唾液腺腺房数と正の相関があった。これは、シロアリのカースト内で、内部形態と関連する役割分担があることを初めて示したものである。また、唾液腺腺房数にはコロニー間で差があった。巣構造などコロニーレベルの形質の決定に大きく影響する可能性があるワーカー形質に、コロニー間で変異があるといえる。


日本生態学会