| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-092  (Poster presentation)

広食性ヘビ類であるヒバカリの各餌種に対する餌処理行動の比較及び採餌コストの考察 【B】
Prey-handling behavior of a generalist snake Hebius vibakari vibakari on earthworms, tadpoles, fish, and frogs: Are there differences in feeding cost? 【B】

*Shusuke YODEN, Akira MORI(Kyoto University)

ヘビ類は基本的に, 相対的に大きな動物を生きたまま丸飲みにするという特徴をもつ. ヘビが餌動物からの抵抗や採餌中の被食リスクを最小化するためにも, 効率良く餌を処理することは重要であり, 多様な分類群の動物を捕食するヘビ類では, 餌とする動物によって様々な餌処理行動が進化してきた. ヘビにおいては, 同一の餌動物に対する餌処理行動をスペシャリストとジェネラリストで比較した研究はあるものの, ある一種のジェネラリストのヘビにおいてその餌動物ごとに餌処理行動を比較した研究は少ない. そこで本研究では, 主に水田地帯に生息するヒバカリを用いて, ミミズ, サカナ, オタマジャクシ, およびカエルに対する餌処理行動を比較した. その結果, どの餌動物においても, 胴で巻きついたりすることはなく, 顎のみを用いて餌を処理するという点は共通することがわかった. 一方で, 嚥下方法には餌動物の吻端あるいは後部末端から真っ直ぐに飲む場合と, 餌動物の身体を折りたたんで飲む場合とがあり, ミミズとオタマジャクシのみで後者の嚥下方法が観察された. また, サカナとカエルではヒバカリがいったん噛み付いた後, 飲み込みに至るまでの間に逃げられてしまう割合が高かった. さらに, カエルは単位重量を得るために必要な処理時間が長いことがわかった. これらの結果から, ヒバカリの食性には処理コストの高い餌と低い餌の両方が含まれることがわかった. ある地域では, ヒバカリは餌資源として処理コストの低い餌であるミミズのみを利用して生活していることが示唆されており, 処理コストの高いカエルやサカナは栄養学的に必須ではないことが考えられる. なぜ処理コストの高い餌が食性に含まれるのかを検討するためには, それぞれの餌の栄養学的特性や野外での餌資源量について調査する必要がある.


日本生態学会