| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-110  (Poster presentation)

ミバエにとってのグァバの価値は?:季節的な寄主利用パタンから検証する
Adaptive value of guava as a host plant of Bactrocera dorsalis species complex based on seasonal host utilization patterns

*久岡知輝(滋賀県立大学院, トビタテ), Sugeng SANTOSO(IPB Univ.), 西田隆義(滋賀県立大学院)
*Tomoki HISAOKA(Univ. Shiga Pref., TOBITATE!), Sugeng SANTOSO(IPB Univ.), Takayoshi NISHIDA(Univ. Shiga Pref.)

われわれは,インドネシアにおいてミバエ類の寄主利用について研究し,超広食性であるBactrocera dorsalis(BD)と寄主範囲がやや狭いB. carambolae(BC)の主要寄主植物の違いを繁殖干渉によって説明した.すなわち,繁殖干渉に優位なBDが最適な寄主であるマンゴーを優先的に利用し,劣位なBCが次善の寄主であるスターフルーツを主要寄主とすることを解明した.しかし,BCがなぜグァバをあまり利用しないのかは不明である.なぜならば,発育パフォーマンスと寄生回避を考慮した総合パフォーマンスにおいて,グァバはスターフルーツに匹敵するからである.本研究では,グァバの結実フェノロジー,BDとBCの季節消長,および寄生圧を追跡した.そしてそれらの結果を統合して,BCがなぜグァバを主要寄主としないのかを説明することを試みた.
ミバエ類の季節消長はメチルオイゲノール・トラップで調べ,寄生圧は,野外で採取した果実から羽化した寄生蜂とミバエの個体数から求めた.グァバの結実フェノロジーも記録した.
グァバは,3ヶ月に一度程度結実したのに対して,スターフルーツは年中結実した.BDとBCの発生ピークは,果実種に関係なくマンゴーの結実期であり,BDの個体数がBCを上回った.しかし,グァバ園ではBDの発生ピーク以降,BCの個体数はBDを上回った.グァバからは,BCの方がBDよりも多く出現した.
以上から,BCがスターフルーツをグァバよりも好む理由として,年中利用できることが考えられた.BCはスターフルーツに留まる限りBDから繁殖干渉を受けないが,グァバへ移動すると,BDと出会い繁殖干渉を受ける可能性がある.そのため,スターフルーツを主要寄主とするのかもしれない.


日本生態学会