| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-112  (Poster presentation)

農地における植物―昆虫相互作用ネットワーク:雑草が害虫を支えているか?
Plant-insect interaction networks in agricultural environment: do exotic and native weeds support pests of rice plants?

*島田直人, 杉浦真治(神戸大・農)
*Naoto SHIMADA, Shinji SUGIURA(Kobe Univ.)

農地において雑草は害虫の発生源となることは経験的に知られてきた。そのため、雑草は害虫を通して間接的に農作物に被害を与えると言われている。水田では、カメムシ類による稲穂からの吸汁によって部分的に褐色化した斑点米ができ、等級を落とす原因となる。斑点米の原因となるカメムシ類は、水田周辺に生育する様々なイネ目雑草も利用すると考えられている。しかし、従来の研究ではスイーピング法によってカメムシが採集されているため、実際にカメムシ各種がどの雑草から吸汁しているのかは十分に分かっていない。雑草が斑点米の原因となるカメムシ類の発生源になっているかどうかを明らかにするために、水田環境における植物とカメムシ類との種間相互関係を定量的に調査した。2019年6月〜10月にかけて、兵庫県丹波篠山市の水田地帯に一定ルートを設け、生育するイネ目植物の繁殖器官から吸汁しているカメムシ類を直接観察して個体数を数えた。結果、植物3科35種からカメムシ類13科27種(829個体)を記録し、種間相互作用ネットワークを描いた。イネのみを利用していたカメムシ類は3種、イネを利用せず雑草を利用していたのが15種、イネおよび雑草の両方を利用していたのが9種であった。イネを利用していたカメムシ類のほとんどは他の雑草も利用するジェネラリストであった。イネの出穂前には出穂後に比べて外来雑草を利用する割合が高い傾向にあった。つまり、在来雑草だけでなく外来雑草もイネを加害するカメムシ類の個体群増加に重要な役割を果たしていた。しかし、在来雑草は28種で外来雑草(7種)よりも多く、実際、カメムシ類の多くが利用していたのは在来雑草だった。以上の結果から、多様な雑草がカメムシ類の発生源となっており、間接的に斑点米被害を増やしている可能性がある。。


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