| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-131  (Poster presentation)

果実の成熟に伴う鳥類の採食行動の変化
The relationship between feeding activity of birds and fruit ripening of trees

*永見侑大, 名波晢, 伊東明(大阪市立大学)
*Yudai NAGAMI, Satoshi NANAMI, Akira ITOH(Osaka City Univ.)

鳥類による種子散布は植物個体群の維持において重要である。植物にとっては果実が熟し、種子が十分に成長してから鳥類に食べられることが望ましい。一方、鳥類にとっては栄養価が高い果実ほど餌としての価値がある。従って果実の成熟度を反映し、なおかつ鳥類が検知できるシグナルが必要である。鳥類はまず色、すなわち反射スペクトルを手掛かりに果実を探しており、特に紫外線(UV)が有効なシグナルであるという説がある。本研究では、(1) UVは果実の栄養価を反映する有効なシグナルであるのか、(2) UVに鳥類が反応して果実を採食しているのか、を明らかにすることを目的とした。
大阪市立大学理学部附属植物園において2019年9月から2020年1月にかけて1週間ごとに、ムクノキ・タラノキ・シャシャンボ・イボタノキ・ヒサカキの5つの樹種、計9個体を対象に果実の反射スペクトル・果実の糖度・鳥類の採食行動を調べた。反射スペクトルの測定には分光光度計(FLAME-S-UV-VIS, OceanOptics社)と人工光源(DH-2000-BAL, OceanOptics社)、糖度の測定には糖度計(PAL-1, アタゴ社)を用いた。鳥類の採食行動は目視による直接観察とセンサーカメラにより記録した。
その結果、全ての樹種において糖度とUVの反射率の間に有意な正の相関がみられた。このことからUVは果実の栄養価を反映する有効なシグナルである可能性がある。樹木には計13種の鳥類が訪れ、そのうち8種で果実の採食が記録された。ヒサカキのように5種の鳥類から果実が採食された種もあれば、ほぼメジロのみが採食したイボタノキやほぼツグミのみが採食したシャシャンボのように一部の鳥類種のみに採食された樹種もあった。果実の糖度とUVの反射率は日が経つにつれて変化した。また鳥類が樹木を訪問し採食する期間は、およそ2週間程度の短い期間に限られていた。この鳥類の採食行動はUVに反応して起こっているのかを検討するため、UVの反射率と訪問頻度・採食頻度の経時変化の対応関係を調べた。


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