| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-141  (Poster presentation)

多摩川河口におけるヤマトケシマグソコガネの生態について
Studies on the Ecology of Leiopsammodius japonicus

*遠藤壱生, 和田薫, 柳川亜季(明星大学)
*Issei Endo issei ENDO, Kaoru WADA, Aki YANAGAWA(Meisei Univ.)

ヤマトケシマグソコガネLeiopsammodius japonicus Rakovic,1981は、ケシマグソコガネ族に属する小型(体長3.5~4.5mm)のコガネムシである。本種の体は細長く、後方で最も幅広く、強く膨隆して、光沢がある。日本においては、北海道・本州・粟島・隠岐・四国・九州・対馬・五島列島、国外では朝鮮半島の沿岸部の海浜の砂地など分布し、3~10月に、海浜の砂地の打ち上げられた海藻や漂着物の下から見つかることが多いとされている。また, 本種は千葉県・三重県・大阪府・長崎県で絶滅危惧Ⅱ類に選定されており、今後も存続が脅かされる可能性がある。絶滅危惧種の保全には、個体群サイズの維持が肝要であり、そのためにはヤマトケシマグソコガネの生態を解明することが喫緊の課題である。
しかし、本種は生態が未解明な部分が多く、他のケシマグソコガネ族は植物の根際で見つかるのに対し、本種は植物の根際からは今まで見つかっていない。そこで本研究では、ヤマトケシマグソコガネの分布と付近の環境条件について調べ、その生態を明らかにすることを目的とした。
調査地は、多摩川河口水位観測所(神奈川県川崎市川崎区殿町)付近の公園とし、調査方法は25cm×25cmのコドラートにより行った。深さは10cmごとに1層・2層・3層と分けて区別し、30cmの深さまで調査した。調査は2019年1月から12月まで毎月1回行った。
調査の結果、多摩川河口に生息するヤマトケシマグソコガネは小さな個体群が2層・3層に比較的多く生息していることが分かった。他の海岸で採集される、海藻や漂着物の下から見つかることの多い本種とは、異なる生活史を持っていると考えられ、非常に興味深い。他の海岸については調査中であり、その結果も併せて発表する。


日本生態学会