| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-153  (Poster presentation)

キタサンショウウオの繁殖期における環境DNA観測
Observation of eDNA in a breeding season of Siberian salamander

*竹下大輝(神戸大・院・発達), 照井滋晴(PEG), 池田幸資(PCKK), 三塚多佳志(PCKK), 源利文(神戸大・院・発達)
*Daiki TAKESHITA(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U), Shigeharu TERUI(PEG), Kousuke IKEDA(PCKK), Takashi MITSUZUKA(PCKK), Toshifumi MINAMOTO(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U)

生物種の絶滅は世界中で問題となっており、人間による生息地の攪乱が大きく影響している。とりわけ湿地に生息する種は諸要因に対して脆弱で、生息現況の把握と保全対策が急がれる。しかし、従来の調査手法では人的資源の制約、コスト、見落とし、環境負荷といった課題があった。近年では、これらを解決し得る手法として環境DNA分析が用いられることが増えてきたが、湿地環境に適用された事例は少なく、結果が反映する範囲は分かっていない。また従来の手法に代替できるかは、各成長段階における環境DNA放出や、マーカーによる検出力の違いといった、結果を左右する要因を検証する必要があった。そこで本研究では、環境DNA分析を釧路湿原域に分布するキタサンショウウオに適用し、繁殖期における環境DNAを観測した。まず、水槽実験において卵嚢と成体の環境DNA放出を確認した。次に野外において採水調査と卵嚢の目視調査を実施した。そして、増幅長の異なる2つのマーカーで環境DNAを分析、卵嚢数との相関を確認した。水槽実験の結果、卵嚢と成体両方から、検出に足る量の環境DNA放出が確認された。野外調査の結果、環境DNA濃度と採水地点周囲7m以内の卵嚢数が強く相関した。また、増幅長が短いマーカーで検出された環境DNA濃度の方が、相関が強いと分かった。本研究はキタサンショウウオのモニタリングに環境DNAが有効だと示しただけでなく、結果が反映する範囲や使用すべきマーカーについて実用的な情報を提供した。今後キタサンショウウオの繁殖期に際し、産卵ポイントや成体の活動範囲を推定するために環境DNA分析が活用されていくことが予想される。


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