| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-156  (Poster presentation)

河川におけるハゼ科ウキゴリ属魚類の微小生息環境利用
Riverine microhabitat use of genus Gymnogobius (Gobiidae)

*浅田稜二(新潟大院自然科学), 木戸杏香(新潟大院自然科学), 飯田碧(新潟大佐渡セ臨海)
*Ryoji ASADA(Grad. Sch. Sci. Niigata Univ.), Kyoka KIDO(Grad. Sch. Sci. Niigata Univ.), Midori IIDA(SMBS, Niigata Univ.)

ウキゴリ属の3種は,本州や北海道などの大規模な河川において,シマウキゴリが中流域,スミウキゴリが汽水域,ウキゴリが中・下流域と,流域により棲み分けを行うとされる.一方で,小規模な河川では棲み分けせず同所的に生息する可能性もあるが,明らかではない.本研究は,河川長が短く汽水域がほとんど形成されないといった特徴を有する河川を対象として,微小生息環境から,ウキゴリ属3種の棲み分けを明らかにすることを目的とした.調査は2018年5月~2019年12月に新潟県の佐渡島28河川,上越4河川の計32河川で行った.各河川の中下流域でウキゴリ属の採集と河川環境の調査を行った.微小生息環境として,個体ごとの採集地点の流速,水深,川幅,底質の粒径の4つの環境要因を測定した.また,河川全体の環境を把握するため,河川の広い範囲で,コドラート調査により4つの環境要因を測定した.調査の結果,3種はほぼ同じ流域で採集された.採集した191個体について解析を行った.河川環境とウキゴリ属の微小生息環境について主成分分析を行ったところ,ウキゴリ属は河川環境の中で流速が緩やかで底質の粒径が小さい地点に生息することが分かった.また,ウキゴリ属3種の採集地点と河川全体の環境のU検定による比較や在不在についての一般化線形モデルから,流速,水深,底質の粒径の環境要因において,シマウキゴリは他2種と比較し流速が速く水深が浅く底質の粒径が粗い環境に生息しており,逆にウキゴリは流速が緩やかで水深が深く底質の粒径が小さな環境に生息していることがわかった.スミウキゴリは他2種の中間的な微小生息地を好んだ.一方で川幅についてはウキゴリが一番広く,次いでシマウキゴリ,スミウキゴリの順になった.以上の結果から,ウキゴリ属の3種は小規模な河川において,同所的に生息するものの,微小生息環境の違いにより棲み分けを行っていることが示唆された.


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