| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-161  (Poster presentation)

沖縄島におけるオオウナギの河川内分布と生活史
Longitudinal distribution and life history of Anguilla marmorata on Okinawa-jima Island

*北朋紘, 立原一憲(琉球大学)
*Tomohiro KITA, Katsunori TACHIHARA(Ryukyu Univ.)

降河回遊魚であるウナギ属魚類は, 外洋で産卵し, 海流によって輸送され, 沿岸域に接岸する. 一定の期間, 黄ウナギとして河川や沿岸域で成長した後, 銀化変態し, 産卵のため降河する. 本属魚類は, 生活史の大部分を黄ウナギとして過ごすため, 黄ウナギが成育場として利用する環境は, 本属魚類の生活史特性に大きな影響をもたらすと考えられる.
本調査地である沖縄島の河川は, 一般的に流程が短く, 流域面積や流量が少ないことから, 陸上から流入する物質の影響を強く受けやすい特質を持つ. そのため, 都市化の進んだ沖縄島南部の河川 (都市河川)と自然豊かな北部の河川 (自然河川) では, 河川環境や生物相が大きく異なる. そこで本研究では, 沖縄島に生息するオオウナギを対象に, 沖縄島の南部と北部における年齢と成長, 成熟の違いを検証した.
沖縄島における本種の最高齢は, 雌20歳, 雄13歳と推定され, 成長に雌雄差が認められた. さらに, 南部個体と北部個体の成長を比較した結果, 南部個体は, 北部個体より若齢で大きく成長し, 成長に差があることが示唆された. 両地域間の成長差は, 緯度と排水流入の有無によって生じた水温差に起因していると考えられた. 生殖腺指数は, 経月的な変化がなく, 本研究では降河時期を推定できなかった. これは, 本種が周年産卵することに起因すると考えられた. また, 南部個体は, 北部個体より若齢で生殖腺が発達する傾向があり, 実際に, 銀化個体の年齢は, 雌雄ともに南部個体 (雌: 13歳, 雄: 7歳) が北部個体 (雌: 19歳, 雄: 11歳) より若齢であった. 南部個体は, 北部個体より水温が高い環境で生育するため, 北部個体より成長が早く, 若齢で生殖腺が発達し, 降河すると考えられた. つまり, 都市河川環境は, 本種の成長や成熟に影響を及ぼし, 成熟や降河のタイミングを早期化させると考えられた.


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