| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-165  (Poster presentation)

水辺林における蘚苔類の種および機能的多様性
Species and functional diversity of bryophytes in riparian forest

*内之八重友典, 山口富美夫(広島大学大学院)
*Tomonori UCHINOHAE, Tomio YAMAGUCHI(Grad school, Hiroshima Univ.)

森林は様々な生態系サービスを提供しており,それらを継続的に利用するには森林における生物多様性と生態系の機能に関する情報の蓄積が重要である.機能的多様性は環境との相互作用に関係する生物の形質,すなわち機能形質の多様性であり生態系機能を規定する要因の一つである.そのため,生態系の持つ機能や役割に対し種多様性と比べてより直接的な影響を与えるものとして注目されている.水辺林(Riparian forest)は河川や沼地などの周辺に発達する独特の植生をもつ森林であり,一般的に維管束植物の種多様性が高い.しかし,河川・渓流周辺の環境において重要な役割を果たしているとされる蘚苔類の種多様性に関しての知見は少なく,機能的多様性についても調べられていない.本研究では水辺林における蘚苔類の種および機能的多様性についての基礎的な知見を得ることを目的とした.水辺林が存在する宮崎県尾鈴山を調査地として,コドラート法とベルトトランセクト法による蘚苔類のサンプリングを行った.コドラート法によって得られたサンプルの同定と形質値の測定を行い,水辺林とそれ以外のエリアで蘚苔類の種多様性と機能的多様性について比較した結果,水辺林にあたるエリアでは,それにあたらないエリアと比べて蘚苔類の種多様性と機能的多様性が高くなる傾向にあった.また,ベルトトランセクト法によって得られたサンプルを用いて河川・渓流部からの距離と蘚苔類の種多様性・機能的多様性の関係について解析した結果,渓流部から離れるほど,種多様性と機能的多様性が低くなる傾向にあった.これらの結果から,水辺林は多様な環境を有し,森林生態系の中で重要な位置を占めていることが蘚苔類の多様性解析からも示唆された.


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