| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-177  (Poster presentation)

本州中部におけるナガレヒキガエルとアズマヒキガエルの交雑状況
Hybridization of two species of japanese toads Bufo torrenticola and Bufo japonicus formosus in central Honshu

*岩岡優真(富山大学), 渡辺拓海(富山大学), 佐藤真(富山大学), 南部久男(富山市科学博物館), 山崎裕治(富山大学)
*Yuma IWAOKA(University of Toyama), Takumi WATANABE(University of Toyama), Shin SATOH(University of Toyama), Hisao NAMBU(Toyama Science Museum), Yuji YAMAZAKI(University of Toyama)

ナガレヒキガエル Bufo torrenticola (以下、ナガレ) とアズマヒキガエル B. japonicus formosus (以下、アズマ) は、本州中部において、互いに重複した自然分布域をもつが、両種は繁殖環境が異なるため、交雑は生じないと考えられてきた。これに対して先行研究では、両種間の交雑が富山県神通川の支流、野積川において報告された。しかし、両種間の詳細な交雑状況は解明されていない。そこで本研究では、主に野積川の個体を対象に、形態学的解析および遺伝学的解析をおこない、両種間の交雑状況の解明を試みた。まず、従来用いられてきた標準体長に対する鼓膜直径の比率に基づき、採集個体をナガレ型およびアズマ型、さらにそれらの中間形質をもつ中間型へと形態的特徴を区分した。次に、ミトコンドリアDNAのCytb領域の部分塩基配列を決定した結果、アズマ系統とナガレ系統のハプロタイプをそれぞれ検出した。各個体において、形態的特徴とハプロタイプの系統を対応させた結果、一致しない個体が多数認められ、多くの個体がナガレ型の形態的特徴を呈していたが、そのほとんどはアズマ系統のハプロタイプを有していた。さらに、核DNAのマイクロサテライト領域5座位の遺伝子型を決定し、ベイズ推定に基づく集団構造解析をおこなった結果、2つの祖先集団の存在が推定され、両祖先集団由来の遺伝的特徴を有する個体が少数認められた。ほとんどの個体はどちらかの祖先集団由来の遺伝的特徴を高頻度に有していたが、由来する祖先集団、ハプロタイプの系統および形態的特徴の3者が互いに一致しない個体も多数認められた。以上の結果は、両種間の交雑が数世代に渡って生じていることを示唆する。また、ナガレ型の形態的特徴およびアズマ系統のハプロタイプを有する個体が高頻度に出現したことから、両種の種間交雑には方向性があり、アズマ系統のハプロタイプを有する個体が母系となり、ナガレとの間で戻し交雑が進行したと考えられる。


日本生態学会