| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-274  (Poster presentation)

一回繁殖型多年生草本オオウバユリの開花臨界サイズの集団間変異
Variations in flowering critical size among populations of monocarpic perennial plant Cardiocrinum cordatum var. glehnii

*芳賀奨平(北大・理学部), 大原雅(北大・院・環境科学)
*Shohei HAGA(Hokkaido Univ. Science), masashi OHARA(Hokkaido Univ. Env. Science)

 一回繁殖型多年生草本オオウバユリは、種子発芽から鱗茎に資源を蓄えながら一葉個体で経年成長の後、複数葉のロゼット葉個体となり、毎年ロゼット葉の枚数を増加させ開花に至る。北海道内の様々な集団を対象に開花個体の花数と地際直径を比較調査した結果、これらの形態は集団間で異なる一方で、毎年異なる個体が開花しているにも関わらず集団内で安定していることが明らかとなった。本研究は、開花個体の形態的特徴が集団間で異なるのは栄養成長から開花(生殖成長)に移行する時の個体の大きさ、すなわち開花臨界サイズが集団間で異なるためと考え、以下の調査を行った。
 野外調査及びサンプリングは、これまでの調査により開花個体の形態に差異が認められた千歳、北大、石狩の3集団で行った。まず開花個体の形態を比較するため開花個体30個体を対象に花数と地際直径を計測した。その結果、千歳は最も花数が少なく(平均7個)、地際直径も細い一方、石狩は最も花数が多く(平均12個)、地際直径も太いことから、3集団で開花個体の形態が異なることが再確認された。次に、各集団における開花臨界サイズの比較を行った。オオウバユリではロゼット葉個体の葉の枚数を成長段階の指標とした。開花期前の6月に各集団でロゼット葉の枚数が4、5、6、7葉(L)の個体をマーキングし、その後7月から11月まで毎月5個体ずつ掘り起こし、鱗茎を解剖し、花茎や葉の発達状況を観察した。その結果、各集団で10月の段階での花茎形成が認められた。花茎の形成が認められたロゼット葉個体を集団間で比較したところ、千歳では4Lや5Lのような比較的小さい個体で花茎が形成されていたのに対し、北大や石狩では4Lや5L個体の花茎形成率は低く、6L以上のより大きなロゼット葉個体まで成長してから花茎を形成することがわかった。以上のことから、集団間の開花個体の形態の差異は、開花臨界サイズの違いと関連することが明らかになった。


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