| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-282  (Poster presentation)

MIG-seq分析によるニューカレドニア産シソ科Oxera属の隠蔽種の発見
MIG-seq analysis revealed a cryptic species in the genus Oxera (Lamiaceae) from New Caledonia

*長岡麟平(東北大学), Gildas GATEBLE(IAC), 井鷺裕司(京都大学), 陶山佳久(東北大学)
*Rimpei NAGAOKA(Tohoku Univ.), Gildas GATEBLE(IAC), Yuji ISAGI(Kyoto Univ.), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ.)

シソ科Oxera属の植物は,南西太平洋に位置するニューカレドニア島の複雑な環境構造の中で,多様な形態・生活史を持つ30種余りに適応放散した種群である.本研究で対象としたO. palamatinerviaは,植物の生育を阻害する超塩基性の貧栄養土壌に生育している.ニューカレドニア島では,この土壌の分布が植物種分化の重要な環境フィルターとして機能しており,本種の系統的位置付けを理解することは,この島における多様性創出機構の一因を解明する手がかりになると考えられる.そこで本研究では,O. palmatinervia及び近縁種の詳細な系統関係を明らかにするとともに,本種の集団遺伝学的解析による種内の遺伝的分化の実態を把握することを当初の目的として研究を実施した.
本種と近縁4種の計188個体をDNA分析用試料とした.これらを次世代シーケンシングによるDNA分析法であるMIG-seq法を用いて分析し,全サンプルからゲノムワイドに一塩基多型(SNP)を探索し,解析に用いた.また,葉緑体DNAのtrnL領域と核DNAのITS2領域の塩基配列を取得し,系統解析に用いた。さらに,検出された種内系統間の違いを分類学的に検討するため,本種の外部形態の観察を行った.
SNPを用いた系統解析により,O. palmatinervia内には明瞭に分化した2系統が存在することが明らかになった.遺伝的分化程度及び,推定された分岐年代からも,これらは別種レベルであることが示され,このことはITS2の情報とも矛盾しなかった.さらに本種内の集団遺伝学的解析により,これら2系統は同所的に分布していながら遺伝的に分化していることが示され,2系統間における内因性の生殖隔離が強く示唆された.これらの結果を踏まえた外部形態観察の結果,2系統は花形質等によって明瞭に区別できることが分かった.特に雄蕊・雌蕊の長さの違いは,送粉者の身体に付着する花粉の位置の違いによる接合前隔離機構として機能している可能性が推察された.これらを根拠に本研究では2系統を別種であると結論付ける.


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