| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-288  (Poster presentation)

共通圃場で植栽されたクリにおける樹形と分枝パターンの系統間変異
Variation of tree shape and branching pattern among Castanea crenata trees planted in a common garden

*瀬木晶帆(京都大・森林生態), 岩泉正和(林木育種センター), 三浦真弘(林木育種センター), 山田浩雄(林木育種センター), 北山兼弘(京都大・森林生態), 小野田雄介(京都大・熱帯林環境学)
*Akiho SEGI(Kyoto Univ. Forest Ecology), Masakazu IWAIZUMI(Forest Tree Breeding Center), Masahiro MIURA(Forest Tree Breeding Center), Hiroo YAMADA(Forest Tree Breeding Center), Kanehiro KITAYAMA(Kyoto Univ. Forest Ecology), Yusuke ONODA(Kyoto Univ.)

樹形は種や種内の遺伝型などによって大きく異なる。樹幹は木材として利用され、通直性が高い方が好まれる。一般的に、広葉樹は針葉樹より通直性が低く、木材としてあまり利用されない。しかし、広葉樹は材強度が高く、通直性さえ高ければ、潜在的な利用価値は高いと考えられる。そこで本研究では、広葉樹の中では比較的木材として利用されるクリに注目し、樹形の多様性とその決定機構について解析した。
岡山県にある林木育種センター関西育種場の共通圃場に植栽されている14年生のクリから、多様な樹形を網羅するように8系統(20個体)を選び、計測を行った。樹形を評価する指標として個体形状比(樹高/平均樹冠幅)を計算した。また樹形に関係しうる形質として、分枝角度、主軸の優勢度(基部断面積に対する積算横枝断面積の割合)、末端の枝葉形質、現存量を測定した。
個体形状比は系統間で3倍近い差があり、クリは系統により樹形が大きく異なることが分かった。形状比が高い(樹形が細長い)系統は、分枝角度が狭く、主軸の優勢度が高い特徴があり、特に後者がより大きく寄与していた。また主軸の優勢度においては、横枝の本数と太さが寄与するが、本数がより重要であった。一方、末端の枝葉形質は形状比と相関が無く、末端の枝葉形質から樹形を予測するのは難しいことが分かった。
個体の現存量は、形状比が大きい系統ほど、小さい傾向があった。成長初期では、横枝を広げて光を多く獲得した方が成長が良かったと考えられる。なお、形状比の大きな系統の方が、高密度植栽に適していると考えられ、形状比と成長の関係には更なる解析が必要である。
以上より、クリには通直性の高い遺伝型も存在し、高い通直性には主軸の優勢度や横枝の少なさが重要であることが分かった。今後は、通直性の高さと成長性の良さを兼ね備えた系統を選抜することが望まれる。


日本生態学会