| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-290  (Poster presentation)

葉の切除が光を巡り競争する植物の成長に与える影響
Differences in plant growth in response to artificial defoliation under competition for light

*中越智也, 立木佑弥, 鈴木準一郎(首都大学東京)
*Tomoya NAKAGOSHI, Yuuya TACHIKI, Jun-Ichirou SUZUKI(Tokyo Metropolitan Univ.)

 植物の成長は、競争と被食に強く影響される。植物は成長過程で大きい個体が小さい個体を被陰することで、個体間で成長量の差が増大し、サイズのばらつきが大きくなる。また競争する個体数が多いほど、ばらつきも大きくなる。一方、動物の捕食などの撹乱は、植物体の損傷を介して直接的に成長に影響を与えるが、光環境の変化を通して、競争にも影響するだろう。特に、被陰されていた個体は被陰から逃れ、光を受けられるようになり、成長が改善する可能性がある。そこで、本研究では、光を巡る競争下の植物について器官の損失が光環境の変化を通して個体や個体群に与える影響を栽培実験で検討した。
 アサガオ(Ipomoea nil)を材料に、競争の強度と本葉の切除の有無を2要因とする栽培実験を行った。地上部の光環境の影響だけを評価するため、全ての個体を同じサイズの鉢に個別に生育させた。各個体が占有する支柱を密集して設置し競争させた。競争個体数を1、2、4、8個体と段階的に変化させた。播種から45日目に葉を切除し、91日目に刈り取り、地下部(根)と地上部(茎、葉、花芽)の乾燥重量を測定した後、各器官の重量を応答変数、実験要因を説明変数、ブロックをランダム効果とするガンマ分布を仮定した一般化線形混合モデルにより解析した。
 競争個体数が中程度の時に平均個体重が最大化する傾向があった。葉の切除は個体重を減少させたが、地上部重量には影響せず、地下部重量は減少した。個体群での個体重のばらつきの相対的な指標として変動係数を算出すると、競争個体数が多いほどばらつきが大きかった。葉の切除は8個体での競争の際にのみ変動係数を小さくする効果があったが、それ以外ではほとんど影響がなかった。
 光を巡る競争は成長を促すが、競争が激しいとその効果が弱まること、及び、葉の切除は競争が十分に激しい時にのみ競争緩和効果があると考えられる。


日本生態学会