| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-304  (Poster presentation)

ケツユクサにおける花の可塑的な性決定と花序内資源量の関係
<p>Relationship between the plasticity of floral sex determination and resources within inflorescences in Commelina communis f. ciliata</p>

*佐藤弘大(岡山大 環境生命), 宮崎祐子(岡山大 環境生命), 勝原光希(神戸大 人間発達環境), 邑上夏菜(神戸大 人間発達環境), 廣部宗(岡山大 環境生命), 兵藤不二夫(岡山大 環境生命), 丑丸敦(神戸大 人間発達環境)
*Kodai SATO(Okayama Univ.), Yuko MIYAZAKI(Okayama Univ.), Koki KATSUHARA(Kobe Univ.), Kana MURAKAMI(Kobe Univ.), Muneto HIROBE(Okayama Univ.), Fujio HYODO(Okayama Univ.), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.)

花は種子植物の有性繁殖のため器官であり,雄器官・雌器官への投資配分を周囲の環境によって可塑的に変化させる種が多く存在する.個体内に両性花と雄花を持つケツユクサでは,一つの花序内で最初に咲く花(以後B1)は両性花であり,B1両性花が結実に成功すれば次に咲く花(以後B2)は雄花に,結実に失敗すればB2は両性花になる傾向がある.またB1開花からB2開花までは2~3日であるが,B1開花から24時間以内にB2の性が決定することがわかっている.一般に,体サイズの増加に伴い雌器官への投資が大きくなることが多いと考えられているが,ケツユクサの性決定パターンへの体サイズの影響はない.そのため,ケツユクサの性決定は花序を単位とする花間の資源競争の結果であることが示唆されるが,この可塑的な個花の性決定機構は明らかではない.そこで本研究では,B1開花から24時間の間の花序内の各器官の資源の増減を調べることで,花序内の資源によりB2の性が制御されているのかを検証することを目的とした.
野外より採取したケツユクサを10個体栽培し,開花期の2019年8月中旬から9月中旬にB1両性花の開花直後に強制他家受粉(結実成功)と,花柱の除去(結実失敗)の2種類の処理を施した.処理時刻を基準とし,その12時間前から24時間後までの間に複数回花序を採取した.採取した花序は花柄,総苞,B1両性花,B2つぼみの器官に分け,それぞれの窒素濃度およびリン濃度を測定した.その結果,B1の開花から24時間の間にB1の結実失敗に伴うB1からの窒素・リンの引き戻しは存在するが,他の花序内器官(花柄,総苞)での一貫した窒素・リン濃度の増加傾向は見られなかった.また,B2つぼみ内の窒素・リン濃度には処理間で違いがなかった.このことから,B1開花から24時間後ではB2の性は決定しているものの,花序内の窒素およびリンの不足が直接的にB2の性を決定する要因ではないことが示唆された.


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