| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-319  (Poster presentation)

森林内に生育する植物 2 種の生活史を通じたアーバスキュラー菌根共生の変化
Changes in arbuscular mycorrhizal colonization throughout life in forest plants.

*Risa SATO(Yamagata Univ. Sci&Eng.), Hiroshi TOMIMATSU(Yamagata Univ.)

大部分の陸上植物は、アーバスキュラー菌根菌(=AM菌)と共生し、光合成産物を提供する代わりに、リンや窒素などの栄養塩をAM菌から得ている。従来の報告では、植物の実生が地上に出現してから、わずか数日でAM菌と共生を始め、その後、急速にAM菌感染率(共生の程度)が高まることなどから、初期の定着過程における菌根共生の重要性が強調されてきた。これまで詳細に調べられてきた植物は、栄養塩が不足しやすい開けた環境に生育しており、AM菌といち早く共生して栄養塩を獲得することは重要だと考えられる。しかし、森林生態系では、実生の定着過程で栄養塩よりも光が強く制限されることから、生活史の初期段階における菌根共生の意義はやや不明瞭である。
 そこで本研究では、北海道の夏緑樹林に生育する複数の植物種を対象に、さまざまな生育段階の個体を採取してAM菌感染率を測定し、菌根共生の時間変化を推定した。その結果、オオバナノエンレイソウの開花個体はAM菌と密接に共生していたが、当年生実生の感染率は低く、出現してから1ヶ月以上が経過した個体でもAM菌の構造体が見られないものも多かった。その後、開花個体に成長する過程で、感染率はゆっくりと増加していくと考えられた。このような結果を含め、発表までに得られたデータを報告する。


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