| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-375  (Poster presentation)

種分布と湿原面積減少の空間パターンから湿原生態系の多様性変化を予測する
Predicting diversity changes in moorland ecosystems based on spatial patterns in species distributions and area contraction of moorlands

*巻島大智(横浜国立大学), 須藤瑠衣(横浜国立大学), 後藤亮仁(横浜国立大学), 石井直浩(東北大学), 谷口快海(東北大学), 河井勇高(東北大学), 内田圭(東京大学), 彦坂幸毅(東北大学), 佐々木雄大(横浜国立大学)
*Daichi MAKISHIMA(Yokohama National Univ.), Rui SUTO(Yokohama National Univ.), Akihito GOTO(Yokohama National Univ.), Naohiro ISHII(Tohoku Univ.), Hayami TANIGUCHI(Tohoku Univ.), Yutaka KAWAI(Tohoku Univ.), Kei UCHIDA(Univ. of Tokyo), Kouki HIKOSAKA(Tohoku Univ.), Takehiro SASAKI(Yokohama National Univ.)

生息地の分断化・消失は生物多様性を低下させる要因の一つと言われており、急速な生息地面積の減少は種の消失に大きな影響を与える。このような急速な面積減少は絶滅の負債を生じさせる可能性があるため、生息地の面積減少と種の消失に関して多くの研究がされてきた。特に種数面積関係は、面積変化に伴い失われる種数を予測する手法の一つとして多くの研究で用いられてきた。しかし面積減少に対して局所絶滅が起こるかどうか、生息地内の種分布や生息地の面積が減少していく傾向によって異なるため、より精度の高い予測にはこれらのことを考慮する必要があると言われている。
本研究の調査地である青森県八甲田山域は様々な標高に湿原が点在しているため、環境の差から各湿原で種組成が異なっており、距離の近い湿原であっても微地形や環境の差から種の分布の傾向が異なっている。この湿原群は面積減少と分断化が同時に起こっており、50年間で面積が平均約44%減少するという急速な変化から絶滅の負債の存在が示唆されている。そのため本研究では、湿原内の環境の差から生じる種の分布の違いを湿原内の環境要因から予測し、面積減少に伴う種の消失の傾向を予測することを目的とした。

調査地として19湿原を抽出し、ラインコドラート法により植生調査を行い、同時に各コドラートで環境要因を測定した。加えて各湿原をGIS上でグリッドに区切り、各グリッド内で環境要因の測定をおこなった。得られた環境要因から湿原内の種の分布をランダムフォレストモデルにて予測した。その際、目的変数を種の在不在、説明変数を各環境要因とした(多重共線性のある変数は説明変数から除外した)。

調査記録から72種の維管束植物が観察された。解析をおこなった結果、各種で予測の精度にばらつきがあり、各湿原内の種分布にも違いが見られたため、本発表では面積減少の傾向の差から生まれる、局所絶滅の可能性を考察する。


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