| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-393  (Poster presentation)

河川における水際部の環境が淡水魚類群集に及ぼす影響
Effects of bank types on freshwater fish assemblages in small to medium streams

*松寺駿(名古屋大学), 森照貴(土木研究所), 肘井直樹(名古屋大学)
*Shun MATSUTERA(Nagoya Univ.), Terutaka MORI(PWRI), Naoki HIJII(Nagoya Univ.)

 河川に生息する淡水魚類において、陸域との境界にあたる河岸または水際部と呼ばれる環境の重要性が指摘されている。本来、水際部は土砂や植物などで構成されるが、治水および利水上の目的からコンクリート護岸が設置される場合も多く、水際部の環境は大きく改変されてきた。先行研究ではコンクリート護岸が周囲の淡水魚類の生息量を減少させることが分かっている。しかし、コンクリート護岸が淡水魚類に及ぼす影響の大きさは地域ごとの淡水魚類相や各魚種の生活様式によって異なると考えられる。そこで本研究では、コンクリート護岸が淡水魚類の種数、個体数に及ぼす影響について、淡水魚類相の違いや各魚種の生活様式に注目して検証を行った。
 調査地域は海からの回遊魚の移入の有無により淡水魚類相が異なる、三重県桑名市と岐阜県山県市・揖斐川町とした。これらの地域を流れる中小河川において、両岸にコンクリート護岸が設置された箇所で魚類および物理環境の調査を行った。水際部の環境は、両岸に土砂が堆積している(ssタイプ)、片岸のみ土砂が堆積している(scタイプ)、両岸とも土砂が堆積していない(ccタイプ)に分類した。各調査地における淡水魚類の種数および個体数に対するコンクリート護岸と淡水魚類相の影響を検証するために、水際タイプ、調査地域を説明変数とした分散分析を行った。また、各魚種を生活様式ごとに分け、同様の解析を行った。
 分散分析の結果、種数はccタイプで減少し、個体数は水際タイプ間で有意な差はみられなかった。生活様式ごとにみると、遊泳魚は種数、個体数ともにssタイプと比べてccタイプで減少し、礫を好む底生魚は個体数がscタイプと比べてccタイプで増加した。また、どの生活様式の種数、個体数においても、調査地域の影響は見みられなかった。本研究の結果から、コンクリート護岸の影響は淡水魚類相によっては変わらず、各魚種の生活様式に応じて異なることが示唆された。


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