| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-395  (Poster presentation)

本州中部上流域の河川敷における希少植物群落の特性および保全策の検討
Characteristics of rare river side grassland communities in upper stream area in central Honshu, Japan for conservation

*中原美穂(信州大院・総合理工研), 大窪久美子(信州大学農学部)
*Miho NAKAHARA(Shinshu Univ.), Kumiko OKUBO(Shinshu University)

 近年、河川敷周辺の河川固有植物や草原性植物の減少や絶滅が全国的な問題となっている。発表者らは、天竜川水系の河川敷でツメレンゲやカワラサイコ等の河川固有植物やスズサイコやイヌハギ等の草原性植物の希少植物の生育を確認し、これらは群落単位での保全が重要と考えられた。そこで、本研究では本水系における希少植物群落の特性と立地環境条件を把握し、成立要因や現状を解明することを目的とした。また、外来植物との関係を考察し、希少植物群落の保全策を検討することを目的とした。
 調査プロットの面積は4㎡で、高水敷に56プロット、低水敷に30プロット、計86プロットが設置された。植生調査は、2018年と2019年の夏季に行われた。立地環境調査では相対光量子束密度と土壌硬度が測定された。さらに管理の履歴に関する聞き取り調査が実施された。
全出現種数は80種であった。TWINSPAN解析によって、全86プロットは八つの群落型(高水敷五つ、低水敷三つ)に、全出現種は九つの種群に分類された。分割の指標種は、高水敷では在来イネ科優占種、低水敷では河川固有植物が使用された。共通種はオオキンケイギクやハリエンジュであった。高水敷のシバが優占する群落型では、オオキンケイギクの優占度が高く、群落構造の改変が考えられた。また、希少植物が集中した群落型では外来および在来木本の優占度が高く、遷移進行や樹林化が指摘された。一方、低水敷では、外来植物のシナダレスズメガヤや在来イネ科草本のチガヤが優占し、河川固有植物の競合種となっていると考えられた。さらに低水敷では高水敷と同様に外来木本の優占による、遷移の進行や河川敷の安定化が考えられた。
 希少植物群落の保全策として、高水敷では希少植物群落の主要な構成種である在来イネ科多年生草本の優占群落に復元することが重要であり、低水敷では外来植物の駆除や遷移進行を抑制する植生管理が特に急務である。


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