| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PD-461  (Poster presentation)

特定外来生物オオバナミズキンバイのクローン構造について
Clonal structure of the invasive aquatic plant Ludwigia grandiflora sensu lato in Japan

*稗田真也(滋賀県立大学), 渡部俊太郎(京都大学), 原田英美子(滋賀県立大学), 野間直彦(滋賀県立大学)
*Shinya HIEDA(Univ. Shiga Pref.), Shuntaro WATANABE(Kyoto Univ.), Emiko HARADA(Univ. Shiga Pref.), Naohiko NOMA(Univ. Shiga Pref.)

オオバナミズキンバイ Ludwigia grandiflora は、米国南東部から南米原産のアカバナ科の抽水植物で、特定外来生物に指定されている。種内に、亜種オオバナミズキンバイ subsp. grandiflora (以下、亜種オオバナ)と、亜種ウスゲオオバナミズキンバイ subsp. hexapetala(以下、亜種ウスゲ)がしられる。侵入・分布拡大履歴の把握を目的として、クローン構造の特定と個体群間の遺伝的な類似度の評価を行った。
調査では、亜種オオバナを2集団(和歌山県:栗屋谷池、兵庫県:逆池)から採取し、亜種ウスゲを15集団(滋賀県琵琶湖とその周辺:新海浜、神上沼、針江、浜分沼、矢橋水路、木浜水路、雄琴港、瀬田川、京都府:蹴上琵琶湖疎水、大阪府:萩乃庄水路、大和川、咲くやこの花館〈ミズキンバイとして栽培〉、千葉県:手賀沼、鹿児島県:串良川、新川西水路)から採取した。
AFLP法では、抽出したDNAを制限酵素EcoRI、MseIで断片化し、先行研究で多型の増幅が確認された8組のプライマーセットでPCRを行った。解析した144サンプルから、計2176フラグメントを特定し、再現性が確認できた265フラグメントを解析に用いた。265断片の有無に基づいて遺伝距離を計算し、近隣結合法で樹状図を作成した。
解析の結果、亜種ウスゲ(近畿地方と手賀沼)・亜種ウスゲ(鹿児島)・亜種オオバナに対応する、3つのクラスターが検出された。これは、日本に3クローンが侵入していることと、亜種ウスゲには、2回の導入機会があったことを示唆する。
亜種ウスゲのうち、近畿地方と手賀沼の集団は遺伝的に非常に近いクラスターを形成したため、同一クローンに由来する可能性が示唆された。さらに、このクラスターにはミズキンバイと誤同定された栽培集団も含まれることから、園芸由来である可能性がある。一方で、日本に水質浄化資材として導入されたとされる亜種オオバナは、栗屋谷池と逆池の集団が同じクラスターを形成したことから、特定のクローンが利用されていたことが疑われる。


日本生態学会