| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PD-481  (Poster presentation)

極東ロシア・ゼイスキー自然保護区における森林構造の標高変化 【B】
Altitudinal variation of forest structure in Zeysky Nature Reserve, Far Eastern Russia 【B】

*Tung Dinh TRAN(Univ. Toyama), Semyon BRYANIN(IGNM FEB RAS), CHULABUSH KHATANCHAROEN(The Univ. Tokyo), 清野達之(筑波大学), 和田直也(富山大学)
*Tung Dinh TRAN(Univ. Toyama), Semyon BRYANIN(IGNM FEB RAS), CHULABUSH KHATANCHAROEN(The Univ. Tokyo), Tatsuyuki SEINO(Univ. Tsukuba), Naoya WADA(Univ. Toyama)

広大な森林面積を有するロシアにおいても、近年、木材蓄積量の減少や林齢の若齢化が問題視されている(Newell & Simeone, 2014)。この原因には、森林火災や過度の伐採を伴う森林施業が関係していると言われており、その背景に施業計画の立案段階における森林資源量の予測精度の低さが指摘されている。当初の過大な見積もりが違法な森林施業と結びついている可能性がある。このような負の連鎖を断つため、安価で簡便かつ正確に森林資源量を推定できる手法の導入が必要である。本研究では、市販型ドローン(DJI社製Mavic 2 Pro)を用いて簡便な写真測量を行い森林の構造を明らかにするのと同時に、本手法を用いた森林資源量推定の有効性を検討することにした。
 標高に応じて様々な森林が状態良く残されている極東ロシア・ゼイスキー自然保護区を調査地とした。2019年8月、標高の違いに応じて3つの調査地を設定した。森林火災の影響を強く受けた林地も加え、計4調査地においてドローン空撮を実施した。簡便性を高めるため地上標識は設置せず、少なくとも1haの範囲を含むように空撮を行った。画像の取得後、SfMソフトウェア(Agisoft社製Photoscan)を用いて3Dモデルを作成し、画像内で抽出した1haの範囲について、DSMとDTMから立木本数や樹高(樹高3 m以上)等を計測した。その結果、中腹のカラマツ優占林が最も密度が低く(393本ha-1:平均林冠木樹高19.7 m)、森林限界付近直下のエゾマツ純林が最も高かった(660本ha-1:平均樹高13.3 m)。森林火災跡地では密度が高かったが(614本ha-1)、うち98%は10 m未満のシラカンバ更新木であった(平均樹高4.2 m)。これらの結果は現地での毎木調査の結果とほぼ等しく、様々なタイプの森林で本手法が適用可能であることが示された。


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