| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-007  (Poster presentation)

照葉樹林におけるイノシシの攪乱が森林の土壌動物群集に与える影響
Effects of wild boar disturbances on soil animal community in the evergreen forest

*長谷川元洋(同志社大学), 豊田鮎(香川大学), 原口岳(地球環境学研究所), 佐藤重穂(森林総合研究所 四国)
*Motohiro HASEGAWA(Doshisha Univ.), Ayu TOYOTA(Kagawa Univ.), Takashi F. HARAGUCHI(RIHN), Shigeho SATO(FFPRI Shikoku)

近年、野生哺乳類の個体数の増加による農林業への被害が増加している。イノシシについては、農地への侵入、農作物の食害だけでなく、森林の林床を鼻先で掘り返す撹乱によって植栽木の苗を倒す被害も報告されている。イノシシによる林床の撹乱は、植物の地下茎、根、あるいは土壌生物などの餌の探索や、泥浴びに伴って生じ、掘り返し場所では,林床植生が失われ、土壌生物の多様性と機能が失われるなどの生態系への悪影響が予測される。そこで、本研究では、高知県土佐清水市の佐田山国有林において、イノシシの侵入を排除した区画を設け、イノシシの侵入がない区画との土壌動物群集構造の比較を行うことで、イノシシの撹乱が土壌動物群集構造に与える影響の把握を試みた。
調査地はモニタリング1000の準コアサイトに指定されており、定期的に林冠植生の調査が行われている。サイト内に90 mのライントランセクトを置き、イノシシ排除区として10 mおきにイノシシを排除するためのステンレス網かご(40 cm × 35 cm)を10点設置した。網かごから2m以内の地点に、2 m × 2 mの対照区(イノシシが自由に侵入可能な区)を設定した。網かご設置前(2017年6月末)および、設置2年後(2019年8月)に、イノシシ排除区と対照区から、土壌コア(25 cm× 深さ5 cm)を1個ずつ採取し、実験室に持ち帰って、ツルグレン装置35℃で3日間抽出を行い土壌動物の同定を行った。設置2年後において、トビムシ、ササラダニ、ケダニ、トゲダニの個体数はイノシシ排除区で有意に少なくなった。また、トビムシにおいて種レベルで解析した結果、種数もイノシシ排除区で有意に少なく、冗長分析により種組成にも排除区と対照区で有意な差が見られた。以上のことから、イノシシによる林床の撹乱は中型土壌動物群集の量的、質的変化をもたらしていると考えられた。


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