| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-027  (Poster presentation)

ワーカーの日齢が行動の可塑性へ与える影響 【B】
The effect of age on behavioral plasticity in an ant worker 【B】

*下地博之, 糟谷奈那, 北條賢(関西学院大学)
*Hiroytuki SHIMOJI, Nana KASUTANI, Masaru K HOJO(Kwansei Gakuin University)

ハチやアリなどの真社会性昆虫では、ワーカー間が日齢に応じて分業を行う。この仕組みは齢差分業と呼ばれ、若いワーカーは巣内で卵や幼虫、女王の世話をする内役として働き、老齢になると巣の外に出て採餌などを行う外役として働く。一方で、ワーカーのタスクは日齢によって固定されたものではなく、社会状況依存的に柔軟に変更する事が知られている。例えば、ミツバチでは外役ワーカーを取り除くと内役 (若齢) ワーカーの一部が外役ワーカーへ、逆に内役ワーカーを除去すると外役 (老齢) ワーカーの一部が内役へタスクを移行して分業が再構築される。このようなタスクの柔軟性は真社会性ハチ目昆虫で広く知られている現象であるが、ミツバチを除いてその詳細なメカニズムは不明である。本研究では、日本産トゲオオハリアリを用いて外役から内役へのタスク変更に焦点を当てて操作実験と行動観察を行った。初めに、どのような個体がタスク変更をするのか調べるために、通常コロニーにおけるワーカーの巣外での活動性を調べ、その後外役以外をコロニーから除去した操作コロニーにおけるワーカーの巣内外の活動性を調べた。その結果、通常コロニーにおいて巣外の活動性が低いワーカーほど、操作後に内役へとタスクを変更した。次に、分業の再構築過程を調べるために、操作コロニー作成後1日目から7日目まで各個体の巣内での活動性と分業再構築後のタスクの関係を調べた。その結果、2日目から巣内での活動性と再構築後のタスクに正の関係が現れた。同様に、通常コロニーにおける巣外での活動性と操作コロニー作成からの7日間の巣内での活動性を調べた結果、7日間全てで巣外での活動性と負の関係性がみられたが1日目では統計学的に有意な差は得られなかった。これらの結果から、通常コロニーにおけるワーカーの行動傾向がその後のタスク変更に影響する事、本種における分業の再構築は早い段階で完了する事が示唆された。


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