| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-053  (Poster presentation)

トカゲの成長に伴う体色変化は、囮戦術を行う微細環境が変化するのか?
As for the metachrosis with the growth of the skink, does minute habitat performing the decoy tactics change?

*原田龍一(なし)
*Ryuichi HARADA(nonpartisan)

これまでの囮戦術の研究は、利己的な攻撃側の戦術と利他的な防御側の戦術が知られている。攻撃側の囮戦術の例は、アンコウなどの待ち伏せ型の捕食者が体の一部を囮(疑似餌)として獲物をおびき寄せる捕食戦術である。一方利他的な防護戦術の例は、偽傷行動である。この行動は巣の中にいる雛や卵に近づいてきた捕食者を遠ざけるために親鳥が怪我をした振りをする(親鳥が囮となる)ことで捕食者の注意を雛や卵から遠ざける被食者の戦術である。トカゲの囮戦術は、利己的な防護戦術である。この行動は被食者のトカゲが捕食者から捕食を回避するために尾部を振ることで捕食者の注意を尾部に引きつけることで致命傷となる部分への攻撃リスクを軽減するための生存戦術である。つまり、被食者が捕食者の謝った攻撃を誘発させる囮戦術である。
 今回取り上げるヒガシニホントカゲは、幼体は派手な青い尾を持つが体色変化後の成体は地味な茶色い尾を持つ。先行研究からトカゲ属のトカゲの青い尾は捕食者を尾に引きつける戦略と考えられている。つまり、青い尾は致命傷となる部分への攻撃リスクを軽減するための囮戦略である。
 今回の着眼点は、囮戦略(青い尾の形質)を持つ幼体と囮戦略が失われた成体が各微細環境間で行う囮戦術(尾振り行動)を決断する頻度が異なるのかを議論する。
項目1は幼体間と成体間の微細環境の生育頻度が異なるのか(幼体と成体の生育環境の変化)。項目2は幼体間、成体間で尾振り行動を決断しやすい微細環境(各世代間で囮戦術を決断しやすい微細環境が存在)があるのか。項目3は、各微細環境下で成体よりも派手な幼体の尾振り頻度が高い微細環境(体色変化後に囮戦術が減少する特定の微細環境)があるのか。以上の3つの項目を考えた。各項目の結果から、トカゲの成長に伴う体色変化と囮戦術を行う微細環境の変化の有無に関する要因として項目1から3のどの要因が重要なのかを考察する。


日本生態学会