| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-075  (Poster presentation)

カラマツ種子における雌性配偶体の成長過程の標高間変異
Inter-altitude variation in the growth process of female gametophytes in Larix kaempferi

*生方正俊, 福山友博, 田村明, 植田守, 高橋誠(林木育種センター)
*Masatoshi UBUKATA, Tomohiro FUKUYAMA, Akira TAMURA, Mamoru UETA, Makoto TAKAHASHI(Forest Tree Breeding Center)

カラマツ( Larix kaempferi)は、落葉性の針葉樹であり、東北南部から中部地方にかけての山岳域に天然分布している。また、北海道から中部地方まで広く植栽され、東北日本地域の主要造林用樹種となっている。我々は、カラマツの種子成熟に関与する環境要因を明らかにするため、気温以外の環境要因の違いが比較的小さいと考えられる一つの山体の同一斜面に植栽されたカラマツを対象として種子の成熟時期の調査を行っている。長野県と群馬県の県境に位置する浅間山の南向き斜面の標高1,300m~2,000mに生育するカラマツ約20個体を対象に、2016年から2018年までの3年間、7月下旬から11月上旬にかけて、約10日間隔で個体別に球果を採取し、精選した種子の発芽率を調査した。これに加えて、標高2,000m以上に天然分布するカラマツ6個体についても同様の調査を行った。今までに、気温が低く標高が高い場所に生育している個体ほど種子の発芽率が低いこと、発芽時期が遅いこと、平均種子重が軽いこと、球果あたりの種子数が少ないことが明らかになっている。今回は、高標高域の発芽時期の遅れは、種子の成熟過程の遅れが影響していることが考えられるため、軟X線画像を用いて種子内部の雌性配偶体の発達状況を個体別、採取時期別に調査した。採取時期が遅くなるに従い種子内での雌性配偶体の占める割合が高くなり、ある値以上の比率になると発芽する種子が急増することがわかった。さらに、高標高域に生育する個体ほど雌性配偶体の発達状況が遅れる結果が得られた。本研究は生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)」の支援を受けて行った。


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