| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-090  (Poster presentation)

琵琶湖の大型藻類はなぜ増えたのか?―光合成特性の違いから探る―
Why have large algae increased in Lake Biwa?-an investigation from photosynthetic characteristics-

*風間健宏(国立環境研究所), 早川和秀(滋賀県・琵環研セ), 霜鳥孝一(国立環境研究所), 永田貴丸(滋賀県・琵環研セ), 今井章雄(国立環境研究所), 小松一弘(国立環境研究所)
*Takehiro KAZAMA(NIES), Kazuhide HAYAKAWA(LBERI), Kouichi SHIMOTORI(NIES), Takamaru NAGATA(LBERI), Akio IMAI(NIES), Kazuhiro KOMATSU(NIES)

植物プランクトン(藻類)の平均サイズは、一般的に、栄養塩負荷の増加に伴い大型化する。しかしながら、琵琶湖北湖におけるStaurastrum属やMicrasterias hardyi等の大型藻類の増加は、必ずしも栄養塩の経年変化とは一致していない。他の要因として光環境の変化も指摘されているが、詳細の解明には至っていない。そこで本研究では、藻類サイズ別の光合成特性に着目し、光環境や栄養塩供給との関係性を把握することを目的とした。
まず野外調査として、2019年6月から11月まで毎月1回、琵琶湖沖合および沿岸の定点において藻類群集を採取した。フィルターで小型藻類(S、<30 μm)と大型藻類(L、≥30 μm)に分画し、高速フラッシュ蛍光光度法 (FRRf) を用いて、最大量子収率(Fv/Fm)、光吸収断面積(σPSII)、熱放散係数(NSV)、および活性中心あたりの電子伝達速度(J)をサイズ別に測定した。さらに、栄養塩添加実験を毎月1回行った。各地点の試料から捕食者を除いて500 mL容のボトル6本に満たし、うち3本はNO3 とPO4を添加し、残り3本は対照区とした。これらを現場水温、500 μmol photon m-2 s-1で48時間培養し、FRRf測定を行った。
藻類群集のサイズ別現存量は、沿岸・沖合ともに6~9月はS>L、10、11月はS<Lであった。沿岸・沖合ともに、LはSより光に対する感受性が低い(σPSIIはS≥L)が、強光ストレスも低い(NSVはS≥L)ために活性が高い(Fv/FmはS≤L)ことが明らかとなった。栄養塩添加実験の結果、Sでは沖合の6、7月に、Lでは沿岸の10、11月に、それぞれ光合成特性に対する顕著な影響が認められた。すなわち栄養塩供給は、常に同じサイズ群集へ影響を与えるとは限らず、場所と季節によって異なる可能性が示唆された。


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