| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-099  (Poster presentation)

光発芽種子において遠赤色光の長期照射によって誘導される休眠現象の実態解明
Induction of deep dormancy by long exposure to far-red irradiation in light-sensitive seeds

*稲川優太, 谷友和(上越教育大学)
*Yuta INAGAWA, Tomokazu TANI(Joetsu University of Education)

光発芽種子は,フィトクロムの性質により,赤色光を照射することで発芽が促進され,その後,遠赤色光を照射すると発芽が抑制される。これらの光照射は通常,数分から数十分程度で効力を発揮するとされている。しかし,光発芽種子に遠赤色光を数日から数週間のレベルで長期照射すると,種子にどのような影響が生じるかは明らかでない。遠赤色光を当て続けることで発芽の抑制効果が固定化され,その後に赤色光を照射しても発芽しなくなることはないのだろうか? 本研究では,光発芽性をもつシソ,ゴボウ,レタスの種子に遠赤色光を異なる日数で長期照射し,その後,赤色光下に一定期間置き,発芽率を計測することで,遠赤色光の長期照射が発芽に及ぼす影響を評価した。
上記3種の種子(品種名:青しそ,グレートレーク,うまいごぼう)にそれぞれ6,7,12種類の期間の遠赤色光照射を行い,その後,発芽に十分な日数にわたって赤色光を照射し続けたところ,どの種においても,遠赤色光の照射日数が長期化すると,赤色光下での発芽率が低下する現象が確認された。発芽率の低下パターンは,種によって異なっており,シソでは遠赤色光照射1日目から2日目にかけて50%近い発芽率の低下が見られたが,ゴボウとレタスでは,発芽率が半減するまでに,それぞれ20日と40日程度の遠赤色光照射を要した。遠赤色光を長期間照射することにより,発芽の抑制効果が固定化され,深い休眠が誘導されたと考えられる。
次に,遠赤色光の長期照射によって誘導された種子休眠が,低温処理によって解除できるかをシソとレタスを用いて調べた。その結果,低温処理によってシソでは休眠を解除できず,レタスでは休眠を解除できることが明らかとなった。今回発見した休眠現象が,フィトクロムの作用ならびにジベレリン,アブシジン酸といったホルモンの産生や分解とどのように関わっているのか,休眠メカニズムの解明を今後進めたい。


日本生態学会