| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PB-173  (Poster presentation)

八重山諸島仲の神島の種子植物相
Flora of seed plants recorded on Nakanokamishima Island in the Yaeyama Group, southern Ryukyus

水谷晃, *藤吉正明, 崎原健, 河野裕美(東海大学)
Akira MIZUTANI, *Masaaki FUJIYOSHI, Ken SAKIHARA, Hiroyoshi KOHNO(Tokai University)

八重山諸島の仲ノ神島は海鳥類の集団繁殖地である。同島に自生する植物は、直接的・間接的に海鳥類の繁殖と関連することが観察されるが、植物相に関する知見は少ない。本研究では、種子植物を明らかにすることを目的として、1989年以降の写真記録と2017年から2019年までに採取した標本をもとに種の同定を行った。その結果、22科32種 (未同定4種含む) の植物が確認された。生育種数は少なかったものの、種名が明らかになった植物は全て在来種であり、外来種は確認されなかった。2019年の生育状況において、多く見られた優占種はソナレシバ、キヌゲメヒシバ、イヌビエ、ハマナタマメ、クロミノオキナワスズメウリ、マルバアカザおよびツルナの7種であった。その他のホウライツユクサ、ヤエヤマハギカズラ、カタバミ、サキシマイチビ、ハマボッス、ボタンボウフウ、グンバイヒルガオ、リュウキュウガシワ等の25種は優占種の群落内に散在するか、または局所的に分布する程度の稀な存在であった。各種の優占度は、季節および経年変化が大きかった。標高102 mと87 mを結ぶ稜線沿いを中心に矮性化したガジュマルが群落を形成していた。それらの葉の形態は、一般的な長楕円形の葉身で先端が突頭となるものから、葉身は円形から卵形で先端が円頭もしくは鈍頭になるものまで連続的な個体差が確認された。また、国内では同島でのみ記録があり、環境省レッドリストで絶滅危惧ⅠAとして掲載されているタイワンハマサジは、北海岸の中央から東端までに群落が散在しており、主な生育環境は斜面の砂岩崩壊地であった。その他の環境省や沖縄県のレッドリスト掲載種は、オニクグとハママンネングサの2種が確認され、前者は主にキヌゲメヒシバやイヌビエ群落に点在し、後者は山頂付近の岩場の割れ目に定着していることが多かった。今後は、外来種の侵入を監視するとともに、植生遷移と海鳥類の繁殖との関連について調査を継続したい。


日本生態学会