| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-309  (Poster presentation)

多種の同時分布推定モデルによる高山植生への気候変動影響の推定
Predicting future distribution of alpine vegetation under climate change by Joint Species Dstribution Model

*石濱史子, 小熊宏之, 雨谷教弘(国立環境研究所)
*Fumiko ISHIHAMA, Hiroyuki OGUMA, Yukihiro AMAGAI(Natl Inst Env. Studies)

高山植物は特に気候変動に対して脆弱な植生であるとされており、保全に有効な対策を検討するためにも、その影響予測が急務となっている。気候変動の影響予測には、これまで分布推定モデルが多くの研究で用いられてきた。しかし、従前の分布推定モデル(SDM; Species Distribution Models)は、通常1種単独で構築されるため、種間相互作用を考慮することが難しいという限界があった。
気候変動に伴う植生変化では、これまでの気候条件で成立していた植生から別の植生への入れ替わりのプロセスが含まれるため、競争などの種間相互作用が将来の分布決定に大きく影響する可能性がある。近年、種間の分布相関を組み込むことで、種間相互作用の検出も期待される、多種の同時分布推定モデル(Joint SDM)の開発が進んできた。Joint SDMは、種間相関のほか、観測されていない分布規定要因を記述する“隠れ変数”を用いることで、多くの種の分布パターンに共通して影響している未知の要因も推定可能である。
本研究では、国内でも広域の高山植生面積を有する大雪山国立公園において、気候変動への適応策を検討するため、将来気候下における植物種の分布予測を行う。分布予測では、従来のSDMとJoint SDMを用い、2つの手法の結果を比較し、分布の種間相関パターンを考慮することによって将来予測がどのように変化しうるか、妥当な種間相互作用を検出できるか、検討する。また、隠れ変数を用いることで、分布推定の精度が向上するか、隠れ変数のパターンに妥当な説明が可能であるかどうかの検討も行う。


日本生態学会