| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-320  (Poster presentation)

東日本大震災後の被災干潟における準絶滅危惧種ウミニナの分布と新規加入の現状
Distribution and recruitment of Batillaria multiformis (NT species) in the Pacific side of the Tohoku region after the 2011 Tohoku Earthquake Tsunami.

*中井静子(日本大学生物資源), 吉田大地(日本大学生物資源), 天海吉裕(日本大学生物資源), 金谷弦(国立環境研究所), 伊藤萌(国立環境研究所), 鈴木孝男(みちのくベントス研), 多留聖典(東邦大), 三浦収(高知大農林海洋)
*Shizuko NAKAI(Nihon Univ. Bioresour. Sci.), Daichi YOSHIDA(Nihon Univ. Bioresour. Sci.), Yoshihiro AMAGAI(Nihon Univ. Bioresour. Sci.), Gen KANAYA(NIES), Hajime ITO(NIES), Takao SUZUKI(Michinoku Benthos), Masanori TARU(TOHO Univ.), Osamu MIURA(Kochi Univ. Agri. Mar.)

【背景】干潟に生息する海産巻貝のウミニナ(Batillaria multiformis)は、全国14都道府県で生息数の減少が危惧されており、準絶滅危惧種(環境省)に指定されている。宮城県でもウミニナは準絶滅危惧種に指定されていたが、ウミニナの生息する干潟は2011年の東日本大震災により大きな被害を受けた。本調査チームは、福島県と宮城県の干潟11地点について震災前後の干潟生物の変化を調査しており、櫃ヶ浦と万石浦の2地点で震災後もウミニナの生息を確認している。また、いくつかの干潟では殻長が10㎜前後のウミニナ類(Batillaria属)の幼貝が見つかっている。これらの幼貝は、ウミニナまたはホソウミニナ(B. attramentaria)の津波後の新規加入個体群と考えられるが、幼貝は形態による種判別が難しく、準絶滅危惧種であるウミニナの新規加入個体が含まれているかは不明であった。そこで本研究では、震災後の干潟における準絶滅危惧種ウミニナの新規加入状況を明らかにするため、宮城県と福島県の干潟11地点でウミニナ類の新規加入個体群の有無を調査し、新規加入個体群が見られた地点について分子遺伝学的手法(PCR-RFLP法)により幼貝集団の種組成を調べた。
【方法】2016年5月、2017年5月に、鮫川、松川浦、鳥の海、櫃ヶ浦、双観山、潜ヶ浦、万石浦(沢田・浦宿)、長面浦、舞根(東舞根)にて干潟上のウミニナ類の生息地を観察した。ウミニナ類の幼貝が見られた干潟では、幼貝をランダムに約50個体採集し、体サイズを計測後、PCR-RFLP法にて種同定を行った。
【結果】ウミニナ類の幼貝は鮫川、鳥の海、櫃ヶ浦、潜ヶ浦、万石浦(浦宿)、舞根(東舞根)の6地点で見られた。採集した幼貝を種判別した結果、準絶滅危惧種のウミニナの新規加入が確認できたのは成貝の生息が確認されている櫃ヶ浦と万石浦の2地点のみであった。


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