| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-328  (Poster presentation)

二枚貝(イシガイ目)の生態機能がドジョウに与える影響
Effect of ecological function of mussel (Unionoida) on loach

*中野光議(石川県立大学)
*Mitsunori NAKANO(Ishikawa Pref. Univ.)

淡水性のイシガイ目二枚貝は河川と湖沼において、濾過摂食による水質の浄化や、糞・偽糞の排泄・堆積による底質中の有機物量の増加等の生態機能(Ecological function)を通して、他の分類群の多様性や生息密度を増加させることが報告されている。しかし、イシガイ類の生態機能が魚類に与える影響を調べた研究例は乏しい。また、日本におけるイシガイ類の生態機能の研究例はほとんど見当たらない。本研究は、国内の農業水路や河川、湖沼に広く分布しているドジョウとヌマガイを材料とし、ヌマガイの生態機能がドジョウの生存に正の影響を与えるという仮説を検証するために室内実験を行った。石川県の農業水路でドジョウを採捕し、実験開始までの3~5日間、毎日給餌しながら室内の水槽で順化させた。ヌマガイは実験開始前日に水路で採捕した。処理水槽(ドジョウ1個体、生きたヌマガイ1個体)を10個、対照水槽(ドジョウ1個体、ヌマガイの殻1個体分)を10個作成し、実験を開始した。ドジョウの生死を2週間にわたって毎朝確認した。実験中は毎日、水槽の水を2Lずつかえた。追加する水は農業水路から採取した。水路の水を使用したのは、二枚貝の餌となるプランクトンやバクテリア等が含まれていると考えたためである。以上の実験を3回繰り返した。ドジョウの生存日数を目的変数、生きたヌマガイの有無と実験開始時のドジョウの体重、およびドジョウの性別を説明変数とするCox比例ハザードモデルを構築した。3回の実験のいずれでも、処理水槽のドジョウの方が対照水槽のドジョウより有意に長く生存した。この結果は、ヌマガイの生態機能がドジョウの生存に正の影響を与えるという仮説に肯定的であった。一方、ドジョウの体重と性別は生存時間との間に有意な関係がなかった。


日本生態学会