| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-368  (Poster presentation)

失われゆく資源植物の知識に共通する生態学的特徴
Ecological characteristics of missing local knowledge on resource plants

*小柳知代(学芸大), 松浦俊也(森林総研), 古川拓哉(森林総研), 小山明日香(森林総研)
*Tomoyo KOYANAGI(Tokyo Gakugei Univ.), Toshiya MATSUURA(FFPRI), Takuya FURUKAWA(FFPRI), Asuka KOYAMA(FFPRI)

農山村には、自然の恵み(生態系サービス)を持続的に享受するために培われてきた自然資源利用に関わる伝統的な生態学的知識(地域知)が存在する。しかし、生活様式の変化に伴う自然資源への依存度低下や、人口減少・高齢化のなかで、地域知は消失の危機にある。特に高度成長期前の自然資源利用が未だ盛んだった頃に10代後半から成人を迎えた戦前・戦中生まれに資源利用の経験や知識が偏在し、このままでは今後急速に各地の農山村の地域知が失われる恐れがある。地域知の消失には、生活様式の変化に関わる社会的・人為的要因だけでなく、利用の対象となる種の生態学的特徴(分布域や個体数など)も影響していると考えられるものの、両者の複合的な関係性は明らかでない。本研究では、農山村で失われつつある資源植物の利用に関わる地域知を対象として年長者への聞き取り調査を行い、地域での利用の変化パターンを明らかにした。更に対象種ごとの変化パターンの差異を応答変数として、種ごとの利用上および生態学的な特徴(生育型、生育・採取環境、販売・利用価値、利用季節、利用部位など)との関連性を検証した。分析の結果、対象地における資源植物の利用の変化パターンには、これらの特徴が複合的に関係していることが明らかになった。特に、生育・採取環境との関連性が強く、集落・農地周辺、里山、奥山で採取される種とで地域知の失われやすさが異なることが示唆された。今後は、継承されてきた地域知や近年他の地域から導入された知識に共通する特徴などにも焦点を当て、地域知の保全と活用の可能性を検討していくことが重要である。


日本生態学会