| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-382  (Poster presentation)

クズの繁茂した高速道路法面における除草剤散布が窒素流出に及ぼす影響
Effect of herbicide application on nitrogen cycling and loss in the Kudzu dominated soil on the slope of a highway road

*福島慶太郎(京都大学), 吉村佳一郎(茨城大学), 堅田元喜(茨城大学), 坂上伸生(茨城大学), 高瀬唯(茨城大学), 榎本忠夫(茨城大学), 及川真平(茨城大学)
*Keitaro FUKUSHIMA(Kyoto Univ.), Keiichiro YOSHIMURA(Ibaraki Univ.), Genki KATATA(Ibaraki Univ.), Nobuo SAKAGAMI(Ibaraki Univ.), Yui TAKASE(Ibaraki Univ.), Tadao ENOMOTO(Ibaraki Univ.), Shimpei OIKAWA(Ibaraki Univ.)

クズは,成長速度が非常に早く,耕作地や河川敷など開放地にいち早く侵入して繁茂する。貧栄養と考えられる盛土にいち早く侵入し,旺盛な生長を果たすことができるのは,クズが窒素固定種であることが一因と考えられる。高速道路の法面においても夏季にクズが大繁茂し,管理会社が駆除にあたる一方,法面には雨水涵養,土壌流出防止,炭素固定など多くの機能の発揮が期待されている。クズが優占する高速道路法面におけるこれらの機能の実態,および除草剤による植生駆除がこれらの機能に与える影響についてはほとんど分かっていない。本研究では,クズが優占的に繁茂する高速道路法面における窒素循環・保持機能,および除草剤の処理がそれらに与える影響について調査を行った。クズの繁茂する法面(C区)では,クズの生えていない法面(N区)に比べて土壌中の硝酸態窒素(NO3-)現存量および他の草本(セイタカアワダチソウ)の窒素濃度が高かった。窒素固定種とされるクズは葉の窒素濃度が高く(2~5%),クズの存在によって土壌の窒素条件および他の植物の窒素状態が向上した可能性が考えられた。除草剤を散布して地上部の植生を枯死させた法面(H区)では,土壌表層のNO3-現存量がC区に対して有意に高かった。また土壌溶液を通年採取して水質を分析した結果,除草剤散布直後からNO3-濃度がH区で上昇し,ピーク時には土壌10cm層でC区の120倍,50cm層で42倍まで上昇した。以上のことから,クズの存在は自己施肥効果によって同所的に存在する他の植物の窒素条件を高め,系内の窒素保持機能およびが示唆された。また,除草処理によって植物-土壌系で保持されていた窒素がNO3-の形態で土壌表層から深層へと高濃度で流出することが示され,周囲の水圏の富栄養化に寄与する可能性が考えられた。


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