| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-385  (Poster presentation)

市民参加のモニタリングと炭やきによる松枯れ防除:秋田市海岸林における15年間の実践
Citizen-leading monitoring and charcoal processing facilitate pine wilt disease control: a 15-year practice in coastal Akita

*星崎和彦(炭やきの会), 蒔田明史(炭やきの会, 秋田県立大学), 井上みずき(炭やきの会, 日本大学文理学部), 板橋朋洋(秋田県立大学, 県立大炭やきサークル, 炭やきの会), 太田和秀(秋田県立大学, 炭やきの会), 北村芽唯(秋田県立大学, 県立大炭やきサークル, 炭やきの会), 小山献冬(県立大炭やきサークル, 秋田県立大学), 齊藤真紀(県立大炭やきサークル, 秋田県立大学), 中林優季(元秋田県立大学), 太田和誠(元秋田県立大学), 小林一三(元秋田県立大学), 山上紘太郎(炭やきの会)
*Kazuhiko HOSHIZAKI(Sumi-yaki no Kai), Akifumi MAKITA(Sumi-yaki no Kai, Akita Prefectural Univ.), Inoue MIZUKI(Sumi-yaki no Kai, Coll. Hum. & Sci., Nihon Univ.), Tomohiro ITABASHI(Akita Prefectural Univ., Sumi-yaki circle, APU, Sumi-yaki no Kai), Ohta KAZUHIDE(Akita Prefectural Univ., Sumi-yaki no Kai), Mei KITAMURA(Akita Prefectural Univ., Sumi-yaki circle, APU, Sumi-yaki no Kai), Kento KOYAMA(Sumi-yaki circle, APU, Akita Prefectural Univ.), Saito MAKI(Sumi-yaki circle, APU, Akita Prefectural Univ.), Yuuki NAKABAYASHI(formerly Akita Pref. Univ.), Kazumasa OHTA(formerly Akita Pref. Univ.), Kazumi KOBAYASHI(formerly Akita Pref. Univ.), Koutarou YAMAGAMI(Sumi-yaki no Kai)

松枯れ(マツ材線虫病)は、マツノザイセンチュウを病原体としてマツノマダラカミキリが媒介するマツの伝染病である。我々は、市民ボランティアと大学が連携して被害木を炭にする活動を続けている。本発表では、18年に及ぶ取組の主な成果について紹介する。

現在、マツ材線虫病の被害は北日本や高標高地で多い。秋田県立大学では、寒冷地では年間を通して発生する枯死木の一部にしか本病の媒介昆虫が寄生しないことに着目し、媒介昆虫寄生木の処理を重視し微害状態の維持を目標とする「秋田方式」の防除法を提唱し、秋田市の海岸クロマツ林「夕日の松原」でその科学的根拠を実証してきた(Ohta et al. 2012, JFR; Hoshizaki et al. 2016, For. Pathol.など)。2002年には夕日の松原に炭やき窯を設置し、市民ボランティアの協力を得て被害木を炭化して資源利用を始めた。2007年からは「炭やきで夕日の松原まもり隊」として組織的に活動を継続してきた。

会の活動は、(1) 16haの活動エリアで被害木の発生を毎月記録するモニタリング、(2) マツノマダラカミキリが幼虫越冬している枯死木の伐採と炭化による材内媒介昆虫の駆除、(3) 炭や木酢液の利活用と炭やきの普及啓発に大別される。これまで184回の炭やきで約600m3のマツ材(平均的なマツ約5300本に相当)から約59トンの炭を生産し、会報で情報発信してきた。その結果、会員数は170名を超え、自然体験イベントの受け入れなど秋田県内を中心に東北地方や関東地方などの各団体とのつながりを生んだ。

当地の松林は現在も微害で当初と変わらぬ姿を保っており、秋田方式の目標を達成できている。そして我々の取り組みは、薬剤を一切使用することなく、ボランティアの力で美しい松林を次世代に残すことが可能なことを示す好例である。


日本生態学会