| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-412  (Poster presentation)

アライグマ防除における意思決定支援システムの導入
Introduction of decision support systems into countermeasures against invasive raccoons

*池田透(北海道大学), 鈴木嵩彬(国立環境研究所, 北海道大学), 淺野玄(岐阜大学), 國永尚稔(岐阜大学), 小林あかり(日本放送協会)
*Tohru IKEDA(Hokkaido Univ.), Takaaki SUZUKI(NIES, Hokkaido Univ.), Makoto ASANO(Gifu Univ.), Naotoshi KUNINAGA(Gifu Univ.), Akari KOBAYASHI(NHK)

 アライグマ防除は全国で実施され、特定外来生物の中でも防除の確認ん・認定の数が最も多い状況とはなっているが、防除の成果が得られた事例は極めて少ない。その要因は形態の似通った在来種との混同によって初期情報が不確かであることなど多々あるが、中でも対策が農業被害防止を目的とした対症療法的な有害鳥獣捕獲となっており、データに基づいた科学的管理体制が構築されていないことが最も大きな要因と考えられる。具体的な捕獲目標も設定されず、捕獲後のモニタリングも行われないため、対策効果もできずに外来種対策の体をなしていない状態にある。しかし、このような状況であるにもかかわらず、多くのアライグマ防除事業においては盲目的に根絶を目標とされており、そのような達成困難な目標設定は、事業の破綻を招くことが多い。
 本研究では、実際にアライグマ対策を実施している地域を対象として、条件検討型の手法を用いて地域的根絶の実現可能性研究を試みた。外来種対策先進国においては、実際の防除以前に実現可能性研究の実施は必須となっているが、日本ではこのプロセスを欠いているために、現実と乖離した対策が多く取られることとなっている。実現可能性研究の結果では、現状では根絶は極めて困難、もしくはさらに条件が整わなくては容易ではないと判断されたが、今後の根絶可能性を高めるシナリオについて考察を行ったところ、周辺地域との連携による侵入防止対策及び低密度でのモニタリング手法の開発、農業等損失価値の適正評価と対策予算確保といった課題が明らかとなった。
 今後は、アライグマ対策における無謀な根絶目標の設定を回避し、実現可能な防除戦略の構築へ向けた課題を整理し、効果的・効率的な対策構築を目指したい。


日本生態学会